今日こそ邪魔はさせないと、ナルトは固く決意した。

              狐日和
                     ―2話・初めてのお招き―


今日もさわやかな陽気の朝。
相変わらずのトーストと牛乳に加え、ハムエッグが加わった朝ごはん。
それをひたすら食べるナルトの横で、狐炎は片づけをしながらこう言った。
「お前、これからは家でもわしを九尾と呼ぶでないぞ。」
「ふぇ?……んぐっ。えーと、なんで??」
突然話しかけられて、あわててナルトは口の中の物を飲み込んだ。
「一つは、とっさでぼろが出ないようにするためだ。
お前は、人前でわしが九尾だとうっかり漏らしかねん。」
「そ、そんなこと!」
「あるだろう?」
素早く反論を封じられ、ナルトは言葉に詰まった。
図星である。
「うー……わかったよ、名前で言えばいーんだろ、名前で言えば!」
うかつに反論すると、理詰めで完膚なきまでに叩きのめされる。
とまでは考えていなかったが、言い返すだけ無駄だと悟ったナルトは、不満ながらも従う事にした。
「わかればいい。」
「ぶーっ……。」
「ふくれるな。みっともない。」
不意打ち気味に頭を軽く小突かれて、ナルトは反射的に頭を押さえた。
「いって〜……。おまえさぁ、家主いじめんなってばよ〜!」
「うるさい。ただのしつけだ。」
「う゛〜……納得いかないってばよー!」
完璧に子供扱いされ、ナルトは不服そうに叫んだ。
無論、子供なのだから、子供扱いされて当然だということは遥かな霊峰の上に置き去りで。


「え?おれんちに、サクラちゃんが?」
ナルトは思わず耳を疑った。
いつも帰りに一緒に帰ろうと誘っても断ってばかりのサクラが、今日に限って自分から言ったのだ。
あんたの家に行くから、一緒に帰ろうと。
「もー、あんたがこの前、あの忍術書が家にあるっていったくせに、
全然持ってこないからに決まってるでしょ!」
「あ、そーだった!……すっかり忘れてたってばよ。」
と、そこでついでにナルトはある事も思い出した。
―やっべー……今うちには九尾が居るんだっけ……。
まさかサクラに物理的な危害を加えるとは思わないが、違う危機感ならナルトにもある。
何しろ、人間の女性ならほうっておけないような美形な姿なのだから。
「あ、そういえば、あんたんちにはあの親戚のお兄さんが居るんでしょ?」
「う、うん。そうだってばよ。え、サクラちゃん……まさか……。」
危機感が現実のものになったかと、ナルトは戦々恐々だ。
だが、その態度は乙女には失礼千万だった。
「ち・が・う・わ・よ!
私はサスケ君一筋なんだから!人を尻軽女みたいな目で見ないでよね!」
「そ、そこまで言ってないってばよ……。」
「まぁ、あの人があんたと違ってかっこいいのは認めるけど。
ああいうクールで『オトナ』なタイプ、身近に居ないしね〜。」
「うーん……確かに居ないってばよ。」
サクラが言っている事とは若干意味が異なる点もあるが、彼女の言葉には素直に同意した。
身近な大人といえばカカシや自来也、それにイルカが居るが、
3人ともサクラが言うような「オトナ」ではない。
カカシは強いとはいえひどい遅刻魔だし、自来也はあの通りの『オープンスケベ』っぷり。
イルカは一番まともだが、良きパパ系の「オトナ」なので意味が違う。
考えてみれば、確かに身近にああいう大人は居ない。
サスケはタイプが近いかもしれないが、年がタメなのですでに除外済みだったりする。
「とにかくそういうわけだから、今日はあんたと一緒に帰るわ。いいでしょ?」
「も、もちろんだってばよ〜!やった〜♪」
いつもはどんなに誘っても、十中八九断られる。
サクラの方からこう申し出てくれたのだから、理由はどうあれ願ったり叶ったりだ。
「やったじゃないわよ、もー。
あんたがちゃんと持ってきてたら、わざわざ家までお邪魔しなくてもすんだんだから。」
呆れたサクラがお小言を言っても、舞い上がったナルトはこれっぽっちも聞いていない。
右の耳から左の耳どころの騒ぎではないだろう。
そもそも、ちゃんと地面に足がついているのだろうか。
「おやおや、珍しいねー。理由がちょっと情けないけど。
ん?どうしたのサスケ。」
「……なんでもねえよ、変態上忍。」
なんでもないといいつつ、明らかに黒いオーラがバックに生じている。
ナルトもサクラも気がついていないのが幸いだが、気づいてしまったカカシにとってははため息ものだ。
と、同時におちょくりがいのある光景でもある。
「ま!あ〜んまり目くじら立てる男は嫌われるよ。やきもちもほどほどにね。」
「誰がやきもちをやいてるだと?!」
「あれー、俺はサスケなんていってないけど?」
―……殺す。いっぺん千鳥を連続で叩き込んでやろうか……!!
苛立ちの一部をこっそりカカシにぶつけると、手入れしていたクナイを手裏剣ホルスターにしまいこむ。
立ち上がったサスケは、カカシに何も言わずにどこかに行ってしまった。


―ナルトの家―
「ただいまってばよ〜。」
ガチャンとドアを閉め、サクラ共々玄関から上がる。
ソファを見ると、ちょうど狐炎は暇つぶしに木彫りの小物をこしらえているところだった。
「あぁ、帰ってきたか……何だ、連れが居るのか。」
「あ、お邪魔してまーす。」
サクラは礼儀正しぺこっとく頭を下げた。
女の子だからと親がしっかりしつけたのだろう、その辺りはしっかりしている。
しかしナルトはそんなことはお構い無しに、サクラの腕をつかんで修行部屋の方に引っ張っていった。
「サクラちゃん、こっち来てってばよ〜。」
「本はそっちなの?」
とりあえず借りるものを早く借りたいサクラは、早く取ってきてとナルトに目で訴えている。
「そーそー、修行部屋ん中。今取ってくるから、ちょっと待っててくれってばよ!」
「……あのゴミ溜めに?本1冊をゴミの山から見つけ切れる自信はあるのか?」
「ば、馬鹿にすんなってばよ!」
威勢よく言い返して、ナルトはバンッと修行部屋の扉を開ける。
部屋の中は開きっぱなしとなった大量の巻物や、
こもっている間に食べ散らかしたと思われるスナック菓子の袋等が散らかっている。
最後に使ったのは、狐炎が仮の体を作って外に現れる前々日。
どこと無く異臭が漂い始めているのは気のせいではない。
部屋の片隅を見れば、カップめんの容器が洗いもせず放置されていた。
小バエがたかっているのも見間違いではないだろう。
「ちょ……ナルト、あんた……片付け、とか、……して、ないでしょ?」
何故か言葉がぶつ切りの片言で喋るサクラの表情は、目一杯引きつっていた。
無理もない。彼女にとってこの修行部屋は異次元に等しい。
絶対目的の物は見つからないと、絶望気分がひょっこり顔を出す。
「あ、あは、あはははは……。」
乾いた笑いがナルトの唇から漏れる。
人は究極的な何かの境地に達すると、笑いしか出なくなるのは何故だろう。
しかし、当然笑っている場合ではない。
「……ナルト。」
「う゛……な、何だってば、よ。」
背後からかけられた冷たい声。嫌な予感がかなりするが、怖くて振り向けない。
そしてその予感は見事的中した。
「片付けろ!」
げしっという鈍い音と共に蹴り飛ばされたナルトは、見事な放物線を描いてゴミの海にダイブした。
あまりの見事な飛びっぷりに、斜め後ろに居たサクラも目が点になる。
「こ、狐炎さん……。」
「何だ?」
「えーっと、すごいキックですね。」
呼んではみたものの、何を言うべきか思いつかない。
仕方なく、サクラはとりあえず感想を述べた。
「そうか。」
「サクラちゃん、つっこむところ違うってばよ〜!」
ナルトの情けない声が聞こえてきたが、サクラはそれで情にほだされるほど甘くはなかった。
「うるさいわね。あんたが散らかすのが悪いんでしょ!
私も手伝うから、チャッチャと片付けて忍術書を探すわよ!」
「は〜い……。」
サクラに怒鳴られると全く頭が上がらないナルトは、塩をかけられたナメクジのように小さくなった。
完全に尻にしかれている。
「やれやれ……女に怒鳴られなければ、片付け一つ出来んのか。このうつけ者め。」
「余計なお世話だってばよ!こんの意地悪キ……ぎゃあああああ!!!」
キツネと続けかけた瞬間、今度はやかんが飛んできた。
とっさに転がってよけたため、やかんはナルトには当たることなく、飛んできた勢いでゴミの海に突き刺さる。
注ぎ口が下になって刺さっているところを見ると、
やかんはゴミの海と熱いキスまで交わしてしまったようだ。
恐らくディープで。
「ちっ……外したか。」
ナルトの真横に突き立ったやかんを見て、狐炎が苦々しく舌打ちする。
それにしても、このやかんはどこから出てきたのだろうか。永遠の謎だ。
「こ、殺す気かーーー?!」
「それくらいで忍者が死ぬのか?」
当たったら確実に即死しそうな勢いで投げておきながら、いけしゃあしゃあとこの一言。
ナルトでなくても腹が立つ。
「お前だったら、おれくらい平気で殺しかねないってばよ!!」
冗談ではなく、本気でそう叫ぶ。
実際、正体はあの妖狐なのだから嘘ではない。
もっとも、そんな事をサクラの前で言えば、今度はやかんくらいではすまないが。
「ちょ、ちょっとナルト、めったなこと言わないの!
あ、でも狐炎さん、いくらなんでもやりすぎじゃあ……。」
さすがにナルトを哀れと思ったらしく、サクラが遠慮がちに意見した。
味方してもらって嬉しかったナルトは、思わず心でガッツポーズを決めていたりする。
しかし、狐炎はそれくらいで引っ込むタマではない。
「こやつはこれ位でちょうどいい。殺しても死なぬ奴だ、気にするな。」
「十分ひど過ぎだってばよ!」
「口を動かしている暇があったら、さっさと片付けろ。
そんなことでは、夜中になってもこの娘は帰れんぞ。」
「そんなことしないってばよ!」
人を馬鹿にするなとナルトは噛み付くが、
それは狐炎に余計に冷ややかな目で見下されるだけだった。
「ほう……無駄口を叩いている暇があるのか?
それと、何度片付けろと言わせれば気が済むのだ?」
ただでさえ低い声がよりいっそう低くなり、狐炎の周りの空気が一瞬で凍りついた。
見下すザクロ色の瞳は、妖魔の本性がのぞいたと錯覚させられるほど怖い。
例えるなら鋼よりも鋭い氷の刃というべきか。
これ以上怒らせたら、やばい。
本能レベルで否応無しに理解させられたナルトは、その視線から逃れるように片付け始めた。
すると狐炎はもうかまう気が失せたのか、きびすを返して修行部屋の前から去ってしまった。
しばし沈黙が走り、1分ほど経ってからサクラが重々しい表情でこう言った。
「ナルト……あんたに一つ言っていい?」
「何だってばよ……サクラちゃん。」
いまだに先程の恐怖から立ち直れないナルトは、サクラの方に振り返らずに返事をする。
サクラは、少し間をおいてから声を潜めてこういった。
「あのお兄さん怒らせるの、もうやめなさい。正直、後ろにいた私も怖かったから。」
「……そーするってばよ。」
実質の付き合いが1日2日だというのに、何だかんだで格の違いを見せ付けられたのだ。
そして止めが恐怖の睨み。
いかに鈍いナルトでも、怒らせることが得策で無いと理解するには十分だ。
その怖い張本人の力で傷の治りが早くても、痛いものは一般人並に痛い。
機嫌を損ねないに限る。
初めて意識して彼の力を借りた時の会話では、一瞬ひるんでもすぐに言い返せたのだが。
やはり同じ舞台に立たれると、そうも行かないようだ。
「あーあ……見つかるかなー?」
ごみためのような部屋を見て、ナルトが肩を落とす。
誰がどう見ても、本1冊を見つけ出す事は容易でないと知れる光景だ。
「見つかるかなじゃなくて、見つける努力をしなさいよ!」
もっともなつっこみと共に、今度はサクラのグーが側頭部を襲撃した。
とても痛いが、狐炎にやられるほどではない。それだけが救いだ。
「はーい……。」
「わかればよしっ!」
もしかしておれ、サクラちゃんと結婚できても尻に敷かれるのかな。と、要らぬ心配が頭をよぎる。
しかし片付けと称して、ただ物をどけているだけでは仕方が無い。
とりあえず、いつの間にか狐炎が放り込んでくれたらしい、
45Lゴミ袋・お徳用にゴミを放り込む事から本格的に作業を始める。
このゴミが、馬鹿にならないくらい量が多いのだが。
「ウェ〜……おれってば、いつの間にこんなためてたんだろ。」
「いつの間にかでしょ。
って、キャーーー、ゴ、ゴゴゴゴゴゴキブリ〜〜〜!!」
そしてサクラがカップめんの容器をどけた下から、ついに油の光沢を持った黒い生物Xがご挨拶。
「え、うっわ、飛んだぁ!待てってばこんにゃろー!」
無駄に憎らしい生物Xは、あろうことか大空に飛び立ちサクラを恐怖のどん底に陥れた。
この突然の奇襲には、普段虫が平気なナルトも驚く。
しかしすぐに体勢を立て直し、男らしく丸めた雑誌を片手に生物Xに立ち向かった。
ここで素早く倒すことが出来れば、サクラからの評価が上がるという若干の下心を抱えながら。

―一方その頃―
表通りのにぎやかな声や音が聞こえる、少し引っ込んだ狭い路地。
「くそっ、何だってこんなに時間を食う羽目に……!」
ナルトが住むアパートの前で、サスケは1人悪態をついていた。
―それもこれも……!!
脳裏によぎるのは、解散後の無駄な時間。
カカシがなかなか帰らなかったために、ナルトとサクラの後をつけられなかったのだ。
本当はすぐにでも2人を追いかけたかったのだが、カカシにからかわれるのが嫌でずっと我慢していた。
しかしサスケはナルトの家を知らない。
おかげで、たまたま会った知り合いや通行人に聞く羽目になり、大分時間をロスしてしまった。
「えーっと、あいつの部屋は304号室か。」
いくらイライラしても、部屋を確かめなければ乗り込みようが無い。
妙に冷静になったサスケは、郵便受けでチェックしてから階段を駆け足で上る。
今もナルトとサクラが2人っきりかと思うと、
サスケの心臓は、血管をぶちぎりそうな勢いで血液を脳天まで押し上げる。
今、ナルトの家には親戚と名乗っている男が1人いる事など、走る途中で頭から落としたらしい。
すれ違った人がおののくほどの超速で3階に駆け上がったサスケは、ブレーキをかけながらドアの前ピッタリで止まる。
怒り心頭でもきっちり決める辺り、さすが優等生だ。
それからはやる気持ちを押さえ、少し考える。
イレギュラーに窓から行くか、このまま正攻法でインターフォンを押すか。
「……一応、押すか。」
欠片だけ残っていた理性が、サスケの右手をインターフォンに導いた。
しかし。
「な、鳴らねぇじゃねえか……・!!」
見かけからして少しボロ気味だとは思ったが、本当にボロかった。
連打してみるが、やっぱり鳴らない。
無機物のクセに人を馬鹿にするとは何事か。サスケの殺意は当社比1,24倍に上昇した。
「おいナルト、俺だ!いるんなら返事――。」
「小僧、何の用だ。」
ドアを激しく叩きながら言い終わりかけたその瞬間、急にドアの向こうから声が聞こえた。
明らかに成人男性の低い声。ナルトではない。
と、言う事は昨日見かけた彼の遠い親戚だという男だろう。
「あ、あんたは確か親戚の……おい、ナルトは?
サクラも一緒にいると思うんだが。」
「あやつらか?今は取り込み中だ。用があるのなら、明日に出直してくるのだな。」
「今じゃなきゃ困るんだよ!」
そう。ナルトの邪魔をするには、今でなければ困るのだ。
それも1分1秒でも早くなければならない。サスケ的には、だが。
「それは残念だったな。あやつらが今やっている事も、今日中にやらねば困る事なのだ。
分かったら出直してこい。」
―こんのスカシ野郎……!!
ナルトとグルじゃないかと、ついつい勘ぐりたくなる。
さらには、彼は大人だから子供の自分を馬鹿にしているんじゃないかとさえ思う。
ここまで来ると被害妄想じみているが、無論それには気がつかない。
冷静さを欠いたら忍者は負けだと、もう1人の自分が心の片隅で言い聞かせる声も聞こえなくなりそうだ。
「どうしてもだめだっていうのか?」
例え髪の毛一本でも入り込む隙があったら逃さないとばかりに、サスケは必死に食い下がる。
もはや体面も見栄もあったものではない。
すると、ドアの向こうでサスケを鼻で笑う気配がした。
「まだ食い下がるのか?全く、つくづく野暮な奴め……。」
「や、野暮だと!?どういう意味だ、おい!!」
まさかナルトの奴、サクラにちょっかいを出してるのか。
サスケの額に冷や汗が流れた。
「身内の俺でさえ、部屋で2人きりにしておいて放っておいているというのに……な。」
「な、なんだとぉぉぉーーーー?!!どういう意味だ、おい!」
居ても立ってもいられず、サスケはドアを乱打した。
壊したらまずいとかそういうことは、当然脳外にダストシュート済みだ。
「意味は自分で考えろ。ああ、それとな。」
「?!」
この期に及んでまだ言う気かと、サスケはものすごい目でドアを睨みつけた。
その視線は、気持ちの上ではドアの向こうに透過しているのだが、勿論届いてはいない。
「間違っても、扉や窓を破って不法侵入などと考えぬ事だな。
子供だろうが何であろうが、修理代はきっちり請求させてもらう。」
「うぐぐぐぐ……。」
先手を打たれたサスケは、うなるだけだ。
勿論諦めたわけではないが、これほどの強敵が相手では、一時引かざるをえない。
今は諦めて帰ろうと階段に向かった時、急に背後に気配を感じた。
それも、一番会いたくない類の人間の気配を。
「困っているようだな、愚弟。」
「げ、兄貴!!」
背後にいたのは、憎い兄・イタチ。
嫌な気配だとは思ったが、まさかこんな所で出くわすとは思ってもいなかった。
何しに来たのかは知らないが、どうせろくな事ではないだろう。
そう思ってサスケが身構えると、イタチは意外な言葉を言った。
「入りたいのなら、俺が手伝ってやろう。」
「はぁ?!どういうつもりだよ!」
まさかこの超自己中な兄が、弟の手助けを申し出るとは。
明日は雨、いや千本かクナイでも降るのではないだろうか。
そしてイタチは弟のうろんな目を無視し、一拍間をおいてこう続ける。
「人の恋路に首をつっこむのが、面白そうだと思ったから。」
「帰れ脳みそ砂糖漬け野郎。お前なんか団子をのどにつめて死んじまえ。」
聞いたほうが馬鹿だったと、その瞬間サスケは地獄の底で後悔した。
この兄の口からまともな言葉が出ると、千分の1でも期待した自分を殴りたい。
「兄に対してその口の利き方は何だ。それよりも、良いのか?
このまま放っておくと、ナルト君とサクラという子は二人きり……そしてめくるめく二人の世―。」
「だー、それ以上言うな〜〜〜!!
わかった、わかったからその方法とやらを教えてくれよ!」
ナルトとサクラがいいムードに発展するなど、どんな幻術よりもサスケにとっては嫌な光景だ。
むしろ、現実だとしても幻術と叫びたくなる。
「そう来なくてはな、では100両払え。教授料だ。」
「高っ!何でそんなにせしめるんだよ!
理由を言え、おい!」
さも当然のように右手を出してきたイタチの手をはたき、即座につっこみを入れるサスケ。
だいたい、弟から100両もぶんどるのは人としていかがなものだろうか。
そもそも使い道が気になるのだが。
「金がなくて今夜の飯が食えそうに無いからだ。」
「しょぼいな、おい。今は給料日前かよ?」
「暁は完全出来高制なのに、あんまり仕事がないから結構苦しいんだ……。
この気持ちは、お前などにわからんだろう。」
イタチはハンカチを取り出し、自分不幸ですモードに突入した。
そもそも忍者という職業は完全出来高制だ。
しかし、口に出せないやばさの高ランク任務しか受けない暁は、
一発入れば大きいが、やはり数が無くてつらいらしい。
「むしろ、わかるような目に会いたくねぇよ。
大体、半分の50両でも安いところなら飯が食えるんじゃないのか?
ていうか、マジで給料日前だし……。」
ちょっと良さげな料理店にでも入れば別だが、50両は少し安めの食堂で食べる分には問題ない金額だ。
金がないと言いつつ、一回の食事に100両も使おうとする神経が分からない。
サスケがもっともな疑問を指摘すると、イタチはむっとした顔でこう言った。
「馬鹿を言うな。それだとデザートが頼めないだろうが。
一番安い奴でも、大体20両くらいは取るんだぞ。」
「馬鹿はお前だよ!金がないなら頼もうとか考えるな!!
財布を考えてから行動しろよ!」
全く信じられない神経である。
金がないなら、デザートくらい我慢すればいいものをと思い、サスケは嫌な事を思い出した。
そういえばイタチは昔から超甘党だった。
兄弟二人で出かければ、必ず甘味処に引きずり込まれたものである。
「デザートは俺の唯一の楽しみだというのに……!!
まぁいい、もう100両は頂いたしな。さっそく教えてやろう。」
「はぁ?いつ俺が金を……って、スッたなてめー!
おいこら、実の弟から金取ってんじゃねーよ!プライドとか無いのかお前は!!」
いつの間にか財布の100両札が、イタチの指に挟まってひらひらしている。
忍の技術は悪用するとプロのすりも真っ青だ。
さすがにS級犯罪者ぞろいの暁に所属するだけのことはある。
「そんなもの、デザートのためなら捨てるに決まっているだろうが。」
「聞いた俺が馬鹿だったよ……!!」
そうだ、昔からこの兄にまともな理屈が通ったためしはないのだ。
今頃思い知らされたサスケは、とりあえず金に関しては放置する事を決めた。
どうせ返す気などないのだ。
幸い、100両で向こう一週間の飯に関わるほどサスケの財布も寒くない。
この前の任務の報酬が降りるまでは、十分に持つはずだ。
「で、具体的にどうやって入る気だよ?
この家には、今ナルトの遠い親戚とか名乗る奴がいる。
どっかを破って入ったら弁償だぞ。わかってるだろうな?」
とりあえずサスケは、数m歩いてナルトの家のドアの前辺りまで引き返した。
天才と馬鹿は紙一重を地でいく変態兄貴でも、術の腕前は超一流のはずだ。
とりあえず、役に立つ術くらい知っているだろう。
「もちろんだ。盗み聞きしていたしな。
しかし、古来より異国に伝わるあの術を使えば、こんな壁など無いも同然。」
「……ほんとか?」
イタチは自信満々だが、やはりサスケは半信半疑といった様子。
この常識が通用しない兄が相手では、無理もない。
しかし、そんなことは知っていても無視して、早速イタチは片手で印を結ぶ構えを取った。
元から片手印とは珍しい術だ。
ちなみにもう片方の手は、サスケの襟首を捕まえている。
「当然だ。いくぞ、忍法・壁抜けの術!」
「ぶぎょわ!!」
イタチはするりと壁を抜け、後に続いたサスケはドアに強烈顔面強打。
美形の卵にあるまじき潰れガエル声が漏れた。
「おい馬鹿兄貴、お前だけ抜けてどーするんだよ!!」
「む、おかしいな……。ちゃんとパーティ全員抜けられるはずなんだが。
少なくとも、某国の忍者はちゃんとできた。この俺に出来ないはずは……。」
サスケの非難をよそに、イタチは眉をしかめて考え込んだ。
昔から忍術に関してはわりと飲み込みが早かったので、
失敗した事実を自分でもあまり信じていないらしい。
「どこのどいつの話だよ!古すぎて誰もわかんねぇよそんなネタ!!」
「これもマテリアを頂くためだ。耐えろユフィ。
耐えればいつかはヒュージマテリアだって手に入る日が来るぞ。」
ドアの向こうから、真顔でみょうちきりんなたしなめ方をするイタチ。
しかも呼んでいる名前が別人だ。
「誰がユフィだ!もう帰れーーー!」
「ボスにテーマ曲をつけるなら、エクスデスかゴルベーザか……。
クジャは変態だからつけたら怒られそうだ。
それともゾーマか?いや待て、奴にテーマ曲などあったか……?」
サスケのつっこみそっちのけで、イタチは深く考え込む。
「だからどこのどいつのネタだーーー!!」
ある特定のジャンルに異様に偏っている事だけは理解したが、元ネタがいまいち思い出せないサスケであった。
「何だお前は……。」
そして唐突に聞こえた怪訝そうな狐炎の声。
多分さっきから居たのだろうが、何らかの都合で喋れなかったものと思われる。
「あ、見つかってしまった。」
「当たり前だこのボケーー!さっさと出てこい!!」
最初につっこんでおくべきだったと激しい後悔に襲われつつ、サスケは肺の空気を全部使って怒鳴った。
が、勿論それを聞く兄ではなく。
「これはこれは。いつもうちの愚弟が、ナルト君にお世話になっています。」
「何食わぬ顔であいさつしてんじゃねーー!!」
これで取り繕うつもりらしく、いきなり礼儀正しく狐炎に挨拶をするイタチ。
どういう神経をしていたらそんなマネが出来るのか、サスケはいつもながら不思議だった。
「そうやって兄をおとしめるとは……。
兄さんだって、いつまでも笑ってないぞ☆」
「キモッ!今、語尾に星をつけただろ!」
いい年した大の男が、語尾に星をつけるなど聞くに堪えない。
大体無表情で語尾をメルヘンチックにされても、D級ホラー映画になるだけだ。
「ずいぶんと愉快な漫才だな。弟をからかうのは面白いか?」
「ええ、大変有意義な暇つぶしになりますよ。」
「どこが有意義だー!あんたも何でつっこまないんだよ、ナルトの親戚!」
いかにも人の不幸を楽しんでいる風な狐炎の態度が、
本日何度切れたかわからない堪忍袋の緒をまたぶちぎった。
ちなみに、サスケの堪忍袋の緒が何本用意されているのかは不明である。
「愉快だからだ。」
「なっ……後で殺す。」
先程から悪印象しか積み上げていない狐炎の一言は、サスケの怒りにさらに油を注いだ。
思わず物騒な一言が漏らすと、ドアの向こうで何故かイタチの目が鋭くなる。
「おいサスケ、他人に殺すなんて言うものじゃないぞ。」
「一族を皆殺しにしたお前が言うな!」
サスケはまだ実行しようとすらしていないのに、
過去に派手にやらかした人間につっこむ資格などあるのだろうか。
「真理は誰の口から語られても尊いものだ。例え語った奴が犬でもな。
俺の口から語られたのだから、尊いに決まっているだろう。」
さも当然のように言い放つイタチ。
どこが悪いんだと、言外に主張している。
「真理がいくら立派だって、言ってる人間のせいで説得力が無いんだよ!
泥棒が盗みはいけないって言うのとレベル一緒だろうがーー!!
わかってていってるだろ?!」
「そんな暴言を言われるたび、俺の繊細な心は傷ついていく……。なんと冷酷な弟だ……。」
ほろりと嘘泣きするイタチ。
ご丁寧に鼻まですすって、いかにもなすすり泣き泣きをアピール。
ドアの向こうまでそのわずかな音が聞こえるのかとか、そういうことは細かいことのようだ。
「心臓に極太の剛毛がびっしり生えてるくせに、よく言うぜ……。」
しかもその剛毛は、チタン製に違いない。
何があっても心臓に傷などつきそうもないだろう。
「また兄をおとしめたな……。
後1回やったら、またお前の財布から100両頂くぞ。以降、3回ごとに1000両。」
「きたねぇ!あ〜もういいから、出てこいよ……迷惑だろ。」
さすがに1000両も取られてしまったら、サスケは向こう2週間路頭に迷う可能性がある。
仕方なく、先程とは違い少々穏やかに諭してみた。
「迷惑ですか?」
「ああ。弟共々、このアパートの半径100m以内から出てゆけ。」
どことなく笑顔すら浮かべて狐炎は言い切った。
イタチがS級犯罪者と知るものなら、恐怖で凍りつきそうな光景だ。
はっきり迷惑といわれてしまったイタチは、少し考えてからドアの向こうの弟にそのまま伝えた。
「……弟共々、出て行け。だそうだ。」
「何で俺まで……!」
この変態兄ならいざ知らず、何故自分までとサスケは憤慨する。
自分の怒鳴り声もかなり近所迷惑になっていることには、当然微塵も気がつかない。
「あの娘のストーカーに用は無い。」
かなり人聞きの悪い言葉で、ばっさりと切り捨てる。
サスケは認めないが、事実今までのサスケの行動はストーカー予備軍に近いものがある。
「俺はストーカーなんかじゃ……!!」
『ストーカーだろう?』
見事にハモる重低音。
「異口同音に言うなーーー!!」
「写輪眼無しでまねてみたぞ。」
イタチは、何故か妙に誇らしげに言い放つ。
そんな事を誇りにされても仕方がない。
「そんなのはどうでもいい!俺のどこがストーカーだ!!」
「そもそも今ここに居る段階で、お前はストーカーだ。
たかが12の半人前が、一人前に恋愛気取りか?」
世の恋する少年少女が聞いたら逆上しそうな手酷いセリフを、狐炎はさらりと言ってのける。
「てめー、子供を馬鹿にすんじゃね〜〜〜!!」
子供を馬鹿にするなといいつつ、サスケは完全に自分の事で憤慨していた。
サクラへの恋心を踏みにじる奴は、例え相手が火影であっても許さないという勢いだ。
「心外だな。俺は子供全般ではなく、
お前という一個体のみを正当に評価しただけだ。」
「それがストーカーだって言うのかよ!
くそっ、もう損害賠償が何だ!今すぐドアをぶち抜いて一発殴ってやる!!」
もう周りの目とか体面などというものは気にしていられない。
腰を落として、サスケはドアをぶち抜く構えに入った。
幸い金属扉ではないので、何とかいけそうだ。
と、その時。
「ほう、お前にはドア代数万両に加え、慰謝料を払うだけの金もあるのか。
それは豪気だな。
やはり、元名門は遺産が多いのか?」
怒り心頭でドアをぶち抜こうとしたサスケの拳を寸前で止めた、狐炎の皮肉たっぷりの忠告。
数万両という額に、サスケもさすがに血の気が引いた。
「げっ……そ、そんなに……?!」
「サスケ。ドアを馬鹿にするな。あれは結構高いんだぞ。
俺も前にうっかり壊してしまったことがあってな、その時は金がなかったから鬼鮫の鮫肌を売った。」
「仲間の武器を売ったのかよ?!」
「本当は、奴をふかひれにして売りたかった……今でも後悔している。
奴の鮫肌は1000両にしかならなかったからな。全く、でかいだけで何の役にもたたん。」
どこまでも血も涙もない男・うちはイタチ。
当然、変態魚類にかける情けはいっぺんたりともないらしい。
武器どころか、本人まで売りたかったと暴露した。
しかもやらなかった事を心底後悔している様子だ。
「いや、どうでもいいから。
どっちかっつったら、多分今お前の隣にいる奴殴りたいし。」
「フン、未熟者が。鍵開け位やってみろ。
お前が『忍者の端くれ』などと抜かすのならば、それくらいは軽かろう?」
「てめぇ……やってやらぁ!」
どこから取り出したのか、サスケは鍵開けツールを取り出した。
その名もまんまな錠前泣かせ。
定番の針金からサムターン回しにまで対応したスペシャルツールである。
法律に引っかかりそうだが、テクがなければ使えないので一応合法。
忍者専用の潜入必携ツールである。多分。
まんまと挑発に引っかかったとはいえ、サスケはさすがに優等生。
ものの1分で鍵を開けた。それにしても、狐炎はいつの間に鍵をかけていたのだろう。
「よし、開いた……!」
よくも人を馬鹿にしてくれたな、
ドアの向こうのくそ野郎と思いつつ、サスケは勢いよくドアを開けた。
しかし、天はそう甘くない。

ガッキーン。

勢いよく開いたドアを力強く引き止める鈍い金属音。
一つはチェーン、もう一つは金属のつっかえ棒もどき。
何のことは無い、防犯の基本3重ロックだった。
「〜〜〜……おいこるぁーーーー!!」
「忍者は裏の裏を読め、愚弟。」
こんなのありかと目で叫ぶ弟に、珍しくもっともなことを述べる兄。
さすがに呆れているようだ。
「くっくっく……。こうも見事に引っかかると、逆に情けないな。」
「笑うな〜〜!つーかお前ホントにただの遠い親戚か?!
大体いくら馬鹿でも、馬鹿兄貴はS級犯罪者だぞ?おい、いいのかよいろんな意味で!!」
「答える義理は無いな。」
さっきまで笑っていた表情をぱっと切り替えて、
そっけない返事を無表情でよこしてきた。全く見事な根性だとサスケは思ったが、
彼の正体は九尾なので人間を恐れるはずもない。
世の中、知らないということは幸せだ。
「ケンカ売ってんのか?」
プルプルと怒りで肩を震わせながら、出せる限りの低い声でサスケは怒りをあらわにする。
もちろん、狐炎は面白そうに見下しているだけだ。
「そういえば、来週水の国で特産の水菓子が特売だった。
後でサメに買いに行かせるか。」
「んなこたどうでもいいっつーの!!
どさくさにまぎれて違う話を混ぜるんじゃねえよ!」


一方その頃、どうにか本を見つけたナルトとサクラは、一段落したという事で休憩を取っていた。
「ねぇナルト、なんか外がうるさくない?」
ギャアギャアと、どこかで誰かが怒鳴る声がかすかに聞こえる。
ドア一枚はさんでも聞こえるのだから、相当大きな声に違いない。
「そういえばそうだってばよ。ちょっと見てくる。」
「じゃあ、その間にちょっとゴミ袋を整理しとくわね。」
「うん、わかったってばよ〜。」
ついでに冷たいお茶の一つでも入れようと、ナルトは修行部屋を出てリビングへ。
それにしても、騒音の原因は何だろう。
気になるので、声が聞こえる玄関の方に向かった。
「ねぇ狐炎、何して―。」
そういいかけた時、視界に入ったシュールな光景。
何故か勝手に家に上がりこんでいる招かれざる客・イタチ。
そして何やらロックがまだ2重にかかったドアのすき間から、怒り狂ってわめきたてるサスケ。
さらに、それを面白そうに傍観する狐炎。
何でそんな状況なのか、そもそもうちは3重ロックだったっけと、まとまりのない思考が頭をぐるぐると回る。
「え……?」
「ん、何だ居たのかナルト君。」
イタチに気づかれ声をかけられてしまったが、フリーズしたナルトの脳には全く届かない。
一体この状況はなんなのか。理解する事を拒否している。
「おいナルト!お前こいつを何とかし」
「遠投の法。」
サスケもナルトに気がつき、加勢を求めたその瞬間。
さりげなく狐炎の妖術が発動した。
「ギャーーー!!」
「あ〜……。」
ものすごく強烈な力が発生し、イタチとサスケはもろともに遥か彼方の星になった。
ドアはイタチがぶつかる直前に、なぜか勝手にロックが外れて開いたので傷一つない。
突然の珍事に、さすがに凍ったナルトの頭も現実世界に帰って来た。
「え、何?!今の何だったんだってばよ!」
「気にするな。しつこい訪問販売が来たとでも思っておけ。」
いけしゃあしゃあと言い切った狐炎に、ナルトは二の句がつげなくなりそうになった。
だが、ここはつっこむところだ。
「いや、思いっきり知り合いだったんですけど。
つーか星にすんなってばよ……サスケかえってこれねーじゃん!」
「ストーカーに用は無い。むしろ帰ってこずとも良い。
それよりナルト、あの娘は騒ぎに気がついていたか?」
一体サスケが何をしたのか気になるが、何故か怖いのであえて聞かないで置く事にした。
とりあえず、明日以降に遥かな地から帰ってくるサスケに、八つ当たりされない事だけを祈っておく。
「え、まあ。でも、誰が来たかは知らないっぽい。」
「ならいい。」
あっさりと言われて、ナルトはほっと胸をなでおろした。
もし誰が来たかサクラが気づいていたら、後が怖い。
「知られたらおれ、殺されるかも……。」
「女に殺されるのか?相変わらず情けない奴め。」
「怒ったサクラちゃん見てそれいえる?」
「たかが12の娘だろうが。」
「前言撤回。お前に聞いたおれが馬鹿でした……。」
ナルトはそれ以上食い下がる事を早々に諦め、心の中でサスケに同情した。
―サスケ、今回は敵が強すぎたってばよ……。
頼むから、絶対に勝とうなどとは思わないでくれ。
それがお前のためだと、ナルトは届きもしない念波を送った。
「ところでナルト、探し物は見つかったのか?」
「あ、うん。それでさ、今休んでるとこだってばよ。
なーなー、うち確か麦茶あったよな?」
「あれは去年のだろうが。金をやるから、近くで適当に買ってこい。」
そもそも麦茶は入れてすぐ飲めるとは言いがたいので、狐炎は小銭を数枚ナルトに渡した。
このあたりは繁華街に近いこともあり、飲み物くらいすぐに調達できる。
「わかったってばよ〜。あ、出かけたってサクラちゃんに言っといて!」
「わかった。」
あわただしくナルトが玄関から飛び出していく光景を見送ると、
狐炎は修行部屋で休憩しているサクラの方に向かった。
騒がしい午後は、間近に迫った日没と共にようやく終わろうとしていた。



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どちらかというと、サスケ受難物語です。
途中のイタチのセリフの元ネタは、FF4の忍者・エッジが、バブイルの塔に侵入した時のことです。
主人公達と合わせて5人、一気に壁抜けしてました。
その他FF、一部ドラクエネタのセリフもありますが。
元ネタ全て理解できる方は、どれくらいいらっしゃるか分かりませんが。
今回一番ラッキーだったのは、あんな目に会ってるとはいえ恐らくナルト。
一応サクラと一緒にいられたので。

(2009/5/6 改行減少・加筆・CSS追加)
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