はぐれ雲から群雲へ
                    ―7話・即席認定じじいと孫―

街道の途中で、鼠蛟が部下を呼んで情報収集をしようと提案した。
彼の眷属である鳥は、噂好きに移動の縛りをなくす翼が相まって、話の早さは随一だ。
今から向こうの近くに忍び込ませるなら、空から自然と入れる鳥の方が都合がいい。
「その身に流れる血の連なりをもって命ずる。いでよ我が眷属が一・唐松。」
眷属招来の呪文を唱えると、光の方陣が現れて一羽のきれいな鳥が召喚された。
「お呼びですか、主様っ!」
雉程度の大きさの鳥は、開口一番そう言った。自分の種族の王に呼ばれて興奮しているのか、目が輝いている。
「そなたの住まいのそばの里にいる、この少女。彼女が王の器かどうか、すぐ調べてくれ。
彼女からでなくても、近くに気配があれば、特定を。報告は、明後日までに。」
「承知いたしました!では、すぐに調査に参ります!」
簡潔な指示にはきはきした元気のいい声で答え、唐松は再び帰っていく。
あっという間のやり取りだった。
「やけに元気がいいのう。で、何であいつなんじゃ?」
「土地勘と、信用。」
「そうか。ま、そんなもんじゃの。」
調査を頼むのだから、能力が水準以上あるなら後は土地勘と信用が大事だろう。
鼠蛟がわざわざ頼りない部下を呼んだとは老紫は思っていないので、そこは特に心配しない。
「結果が来るまでの間、支度でもしておくか。もう少し情報も欲しい。」
ろくに記述のない件の少女のページを見ながら狐炎が言った。横から覗き込んだナルトが苦い顔をする。
「細かいのが2行ちょいしかないもんなー、これ。」
「そりゃ、相手がほぼ皆全滅すればそうもなるぞい。」
情報を持ち帰れる人間が少ないのだから、当然詳細は分かりにくくなる。
拘束のためにプロフィールを公開する抜け忍や、所属の里で普通に話題に上る正規部隊の忍者と違い、
人柱力は情報を徹底的に隠しているということだろう。
単純にまだ若くて、目をつけられるような重要任務をこなした数が少ないのかもしれないが。
「そんじゃ、手分けしてやるぞい。もうすぐ次の町じゃし、わしと孫で道具の買出しにでも行ってくるかの。」
「え?孫って……おれ?!」
「そうじゃ、おぬしは今日からわしの孫じゃ!」
「何で〜〜っ?!」
これはまた無茶苦茶かつ一方的な宣言。ナルトが絶叫するのも無理は無かった。
実の親の顔だって知らない身に、いきなりおじいちゃんが降って来るなんて想定外だ。
「よいではないか、細かい事を気にするとハゲるぞい!」
「そういう問題?!ちょっと鼠蛟さん!あんたもつっこんでくれってば!!」
「言うだけ、無駄。」
バンバン背中を激しく激励されるナルトに、鼠蛟はそっけない返事をよこした。
長い付き合いゆえの諦めに違いないが、あんまりだ。
「そんなん有り?!ちょ、狐炎!!」
「良かったな。いいからさっさと用を足して来い。」
助けを求めてとりあえず手近な狐炎に話を振ったが、彼はためらいなくナルトを見捨てた。
さっさとビンゴブックをしまって、ナルトのそばを離れる。
「ちくしょ〜!お前っ、後で覚えてろってばよ!!」
「そうか、楽しみにしておるぞ。出来るものならばな。」
嫌味なくらい悠然とした態度で、口元だけ微笑んだ狐炎はさっさと自分の用事のために立ち去った。
後には、まともに取り合ってさえもらえなかった哀れな少年が虚しく残る。
―うっわ、だからこいつ嫌いなんだってーーーー!!!―
町の方向に遠くなっていく背中に怒鳴ったら余計馬鹿にされるから、必死で拳と肩を震わせてナルトは堪えた。
この態度でさえ笑われると思うと、もうどこに怒りを持って行っていいかさっぱりだが。
「まあまあ、性悪な奴なんぞほっといてさっさと行くぞい!
いいものが売り切れたら大変じゃ!お膳は急げじゃぞ!」
「それを言うなら、善は急げ。……あ。」
ナルトを引きずって町まで爆走していく老紫には、もう鼠蛟の声は届いていそうもなかった。


―忍具屋・ひた走り―
また裏通りの店かと、ついナルトがこぼしたくなるような狭い路地の奥にある店。
ここは人目を避けなければならない事情を持った忍者達が、安心して利用できる数少ない店の1つだ。
そして、そういった店の中でも割と珍しい仕組みで運営している店でもある。
その事に、ナルトは一歩足を踏み入れてすぐに気付いた。
「あれ?」
驚いて目をしばたたかせる。扉を開けて目に入った店内は、一切人影が無い。
それどころか、商品はガラスケース内のレプリカだけ。
レジらしきものも無く、顔を明かさないタイプの窓口が1つあるだけという妙なつくりだ。
「おお孫よ、おぬしはこういう店は初めてじゃったか!」
きょとんとしている様子を見て、老紫が面白そうに笑った。
「そりゃ……っていうか何これ?どうやって買うの?」
店内をぱっと見ただけでは、どう買い物するかは直感出来ない。
ケースに見本はあるが、買う手順が皆目見当も付かなかった。ナルトはきょろきょろと見回している。
すると、老紫がガラスケースを指差した。
「まず、そこの棚を見て商品番号と数を箱に入っとる紙に書くんじゃ。」
「ふんふん。」
言われた通りにガラスケースを見ると、中の商品にはそれぞれ番号が振られた値札がつけられている。
さらにケースの外側には、注文票とペンが入った箱が取り付けられていた。これに書くらしい。
「それからそこの窓口に紙をつっこむと、合計金額を言ってくる。
金を支払えば、商品を横の受け取り口に出してくるんじゃ。
よっぽどでかいもんを頼まん限り、店員は来ないぞい。」
「へー、店の人が全然出てこないんだ。」
窓口の脇の壁に、刀でも楽に取り出せそうな大きい受け取り口がついている。
今は扉で閉められているが、ここで受け渡しできる大きさの商品なら店員とは一切顔合わせしないで済む。
「うむ。賞金が高い抜け忍には、超用心深いのも多いんじゃ。
こういう裏の連中は結構口が堅いんじゃがのー、それでも嫌じゃっちゅー奴らにはこういう店が人気なんじゃ。」
確かにそれなら、声だけで顔を出さずに済むから匿名の保証はばっちりだ。
店としても、商品は奥だから盗難の心配もなくて万々歳だろう。
「じいちゃんも用心深いの?」
「んー、わしは綺麗な姉ちゃんが店番してるところならどこでもいいぞい!」
こんな店を知っている位だからと思ってたずねたのに、老紫は胸を張ってしょうもない事を口走った。
ナルトは露骨にげんなりした顔になる。
「うっわ、こんな所にもエロ仙人みたいなのが居るってばよ……。」
この反応のせいで、旅館でちょっと綺麗な仲居なんて見かけようものなら、
すぐに顔をみっともなく崩してナンパに走っていた自来也を思い出す。
後ろから、狐炎と共同で冷たい視線を突き刺してやったのはいい思い出だ。
ちなみにその後で若い仲居の場合は、普通に部屋に案内してもらった礼を言っただけの狐炎に気を取られるという現象も発生した。
そんな時はここぞとばかりに、「後30年若ければよかったねー」とモロにいじめた事もあったものである。
「エロくないもーん。わしは素直なんじゃ!」
きっと狐炎が居たら、「下半身にか?」と、蔑みきった目で言ってくれたに違いない。
何しろ彼は下ネタが大嫌いだ。以前ナルトのお色気の術を見て、無言で張り倒してきたのだから間違いない。
それなりの付き合いになるので、その辺りは簡単に想像がついた。
「そんな下半身に素直で、相方に怒られねーの?」
まだ会って間もないあの群青と銀の髪の落ち着いた佇まいの妖魔を思い浮かべながら、
老紫のあけすけな物言いに苦言を呈した。
「大丈夫じゃ!うちのはああ見えてそんなにうるさくないからの!」
「マジ?!全然そう見えないってばよ……。」
意外な真実にナルトは仰天した。
医者という職業、何となくまじめに見える雰囲気、その合わせ技のせいか、彼にはとてもそう見えなかった。
「あいつはむっつりなんじゃ、だまされちゃいかんぞい。エロ本だって読むし、猥談だってノリノリじゃ!」
「う、うっわー……絶対狐炎系だと思ってたのに……。」
人を外見で判断するなというが、ここにも実例があったとは。
猥談なんて拒否するか興味なさそうな顔をするか、どちらかだと思ったのに。
あの色白で生気が薄そうな顔に、どんな表情を浮かべて下ネタを話すのか今は想像もつかない。
ナルトは現実を受け入れられずに固まった。
「そういうわけじゃから、困ったらエロ本を借りに行くといいぞい。もちろんわしも貸してやるがの。」
「あー、うん……ありがと。」
困ったときの内容云々は、男と男の以心伝心。あえて確認するまでもないだろう。
「ところで、おぬしは何を買うんじゃ?」
早速必要なものを注文票に
「えーっと、普通のちっちゃいクナイを20本でいいや。
大きいのまだ持ってるし、いざとなったらあいつの持ってる奴借りるってばよ。重くなるし、口寄せの巻物書けないし。」
基本的にナルトは忍具をあまり使わないので、武器は牽制と防御用に少しあれば十分だ。
暗器口寄せの巻物も持っているが、自分では書けないので買い込んだところで収納に困る。
「むー、あいつらの武器は当てにしない方がいいぞい?」
「えー、何もなければさすがに貸してくれたってばよ?……たまに。」
手持ちの武器が尽きたとしても、貸与してくれるかは老紫の言う通り確かに当てにならない。
そうなるともうナルトでは不足と見て、彼自身の力で葬られたこと多数だ。
貸してくれたのはある程度短刀の扱いを練習した後、一度はと言って持たせてくれた時だけである。
万一の時に備えてと言っていた。
「本当かー?」
「ほんとだってばよ!緋迅って言う、短い刀だけどさ。
本当は太刀の方借りたかったんだけどさー、お前には絶対だめって言われたってばよ。」
「うーむ、元々長い刀は扱いが難しいからのう。
みっちり小さい時から叩き込まれんと、なかなか扱えんぞい。抜くのだって面倒じゃ。」
「ふーん。じいちゃんは使った事あるわけ?」
短刀しか使った事のナルトにとってはそんなものかという程度だが、そんなに扱いにくいものなのだろうか。
身近で扱っているのは狐炎位だし、彼は熟練者だから簡単そうに扱ってしまうので、いまいち老紫の言うことは実感できなかった。
「あんまりないのー。大体剣術は、本職の侍には敵わんぞ。」
「やっぱそんなもんか。」
忍者の里にも剣術が盛んな場所はあるが、平均してみれば長刀の扱いはやはり武士に劣るのがほとんどだ。
そもそも忍者は諜報や潜入が多いから、刀に限らず長柄武器全般にそう強くない。
大抵は目立たない小さな武器を携帯する方が理にかなっているから、そちらを重視して訓練するためである。
もちろんどこにでも例外はあって、戦闘中心で大型武器を専門に扱う隊を抱えている里も普通だ。
「でっかい武器は見栄えもいいし威力もあるがの、隠すのがめんどくさいんじゃ。
よっぽどこだわりが無い限りは、使わんのー。」
「知り合いに、でっかい扇子持ってる姉ちゃんとかいたけどなー。」
我愛羅の姉・テマリは、ナルトが見た時はまだ15歳だったがすでに見事な扇子使いだった。
扇子使いというとそれ位しか彼は知らないが、大きな扇子が目を引いたので良く覚えている。
「扇子というと風遁じゃな。そりゃ術と相性がいいんじゃろ。」
サイズは置いておいて、風を起こす扇子は風遁の媒体には直感的でちょうどいい。
もちろん使わない人間も多いが、突風系の術を好んで使う忍者には人気だ。
「あ、そうだったのかー。知らなかったってばよ。」
へーっとつい口から漏れるほど、ナルトは素直に感心する。
テマリが巨大扇子を操る姿は実に絵になっていると思ったものだが、あれは別に伊達や張ったりではなかったのかと今さらながら理解した。
「扇は羨ましいぞい。暑い時はバサーッとやって欲しいもんじゃ。」
「いや、そういうのじゃないでしょあれ。」
確かにアレであおいだら扇風機並みにいい風が来そうだと思うが、
涼風を通り越してかまいたちが出そうなので、ナルトは到底やる気はしなかった。


それから2日。町で調べた範囲では緑の髪の少女についての追加情報は特に得られなかった。
町の近くで野営をしながら唐松の報告を待っていた一行の下に、その彼が大慌てで現れた。
「主様ー、緊急連絡ですっ!」
「どうした?」
一も二もなくすっ飛んできた様子の唐松に応対する鼠蛟の顔は、自然と緊張を帯びる。
十中八九悪い知らせだろうが、果たしてどこまで悪いのか。
「先日、炎王様から通達があった黒い外套の集団、そいつらが滝隠れの近くをうろついてます!」
『!』
暁が、もうすでに人柱力と思われる人物の元に近づいている。否が応なく場の空気が凍った。
「それと例の少女、やはり妖魔王様の器のようです。
力の大きさからして間違いないと思われますが、いかがいたしましょう?」
「すぐに、そちらへ向かう。」
部下の問いに鼠蛟は即決した。人柱力の確証が得られたならば、選択肢はない。
こうしている間にも、向こうはどんどん滝隠れへ忍び寄っているのだ。
「えっ、でもこっから滝隠れって遠いんじゃないの?」
間に合わないんじゃないかという不安をナルトが見せると、心配要らないと鼠蛟は首を横に振った。
「遥地翔で、近くの鳥の集落へ行く。そこから歩けば、近い。」
「あっ、そうか!」
「おお、それならいけそうじゃの!」
遥地翔は知っている土地にしかいけない妖術だが、逆に知ってさえいればどこへでも一瞬で移動できる。
暁を出し抜くことも不可能ではない。そうと決まれば話は早く、一行はすぐに術を使って目的地へと向かった。



―滝隠れの里―
里を見下ろす滝が流れる高台にたどり着くまでは、鼠蛟が言った通りたいした時間はかからなかった。
見渡す町並みにはここから感じるほどの異変はない。
幸いにして暁が先にたどり着いた気配もなく、ひとまずの猶予は確かめられた。
滝の音にまぎれて声が下まで届かないこの場所で、一行は町を見下ろしながらひそひそと相談している。
「これ全部が滝隠れかぁ……。木の葉よりは狭いけど、やっぱ広いってばよ。」
「人柱力の子はどこに居ると思う?」
「どこか管理のしやすい場所で、監視付きの生活を送っておると考えるのが妥当だな。」
ナルトがぼやくとおり、比較的規模が小さな里でも人を探すには広い。
闇雲に捜索していたら、とても見つけられないだろう。
狐炎が言う管理のしやすい場所というものに見当をつけないと、居そうな場所の候補も決まらない。
「何で監視つきなんだってばよ。人柱力ってそんな扱いされんの?」
ナルトは木の葉で監視をつけられた経験がないので、狐炎の見解を不思議に思う。
「里の秘蔵兵器という扱いならば、里内とはいえあまり自由にさせぬはずだ。
我愛羅のように、立場だけでも里長の子女というならばともかく、どこぞの老体のように脱走されても困るだろう?」
確かに気分がいい事ではないが、里にしてみればぶらぶらされたら困るという理屈は分かる。
そういえばナルト自身は、生まれてから波の国の任務に出るまで里外に出たことはなかった。
それでも比較的自由にさせてくれていたから良かったが、狐炎が言うような管理だったら、窮屈でとても我慢できそうにない。
そこまで考えて、ふと気がついた。
「じいちゃん、もしかして一日中見張られてたから逃げたとか……?」
「よく分かったの!だっておちおち気晴らしもできんもーん。」
「マジだったってば……。」
えっへんとふんぞり返って言うことだろうか。脱力したナルトは、追及する気も失せた。
半分冗談のつもりで言ったのに、まさか本当だと言われるとは。
そんな馬鹿なやり取りを尻目に、狐炎と鼠蛟はあれこれ言葉を交わしながら見当をつけていた。
「この分だと、怪しいのは……。」
「何じゃ、あそこかの?」
「多分。」
鼠蛟が見つめている辺りを、老紫も身を乗り出して覗く。どうやら、里外れにぽつんと立ち並ぶ建物群を見ているらしい。
里の中心部近くにある里長の家とは違うその場所は、確かに目を引いた。
「磊狢の気配も濃い。あの辺りでまず間違いないな。」
「でも、見張りとか多そうだってばよ……どうやって近づくってば?」
いくら小さな里でも、里の重要人物なのだから見張りはうようよしているに違いない。
昼間でもそこかしこに立っていそうだ。少なくとも要所にはきっちり配置されていることだろう。
「それなら、我が行く。」
「どうするんじゃ?」
「小鳥に化ける。」
今度は御大自ら潜入と行くらしい。妖術は忍者に見破られる危険性がないとはいえ、いきなり乗り込むとは大胆だ。
それが一番効率的に違いないが。
「狐炎、召喚符を。」
「分かった。」
促された狐炎が筆と白紙の符を取り出し、術式符専用の墨でサラサラと術式を書いた。
すぐに乾くものらしく、受け取った鼠蛟は乾き具合も気にせずに召喚符を懐に入れる。
「それ、何に使うんだってばよ?」
「手引きに、使う。」
先に入った鼠蛟が目的の場所で召喚符を使えば、簡単に全員が侵入完了する。
目立たずに入り込むなら、かなり楽な手段である。
「へー、そんな使い方もできんのか〜。……っていうか、お前も召喚されるんだ。」
「わしら妖魔王であっても、それ相応の手段を用いれば可能だ。もっとも、そう簡単に契約はさせぬがな。」
狐炎の言うとおり、妖魔王ともなると滅多な事では自身を召喚可能にする契約を結ばない。
必要があれば今回のように召喚符を手渡して済ませるが、これ自体滅多にない程だ。
高貴で力ある彼らは、元々下位種族に力を貸したがらないのだろう。
「契約しても、何人呼べるか……。」
「そんなにヘビーなもんなの?」
「ヘビーらしいぞい。口寄せも召喚も、対象が強ければ強いほどチャクラの消費量が上がるからの。
ま、わしら人柱力の素のチャクラ位なら夢ではないぞい。」
どんな生き物を呼ぶにしても、強ければそれ相応の力量が術者に要求される。
召喚は口寄せと違い、発動時に消費する力は何でもいいのだが、
それでも妖魔の王である尾獣を呼ぶには、並大抵の術者では命1つ使っても足りない。
チャクラが多い人柱力や、霊力が非常に強い巫女や陰陽師などなら、もちろん命と引き換えなくても呼べる。
それでもかなりの負担にはなりそうだ。
「マジで?でも、おれだけ呼べるようにされてそれっきり放置なんだけど……。」
「わしもじゃ……けち臭い妖魔は嫌じゃのう。何でじゃ?!」
別行動時の保険としてナルトは狐炎の召喚獣にされた事があるが、逆に彼を呼べるようにしてもらった覚えはない。
老紫も同様だ。消費する力の量が無問題なら、召喚可能にしてくれたってバチは当たらないだろうに。
今は封印されている身とはいえ、それでも召喚出来れば戦況をひっくり返せるほどの戦力だ。
しかし、そんな理屈が通る相手ではない。
「嫌だから。」
「こんな調子の輩と契約するなぞ、死んだ方がましだ。」
「ちょっ、ひどっ、2人して言い草がひどすぎるってばよ!」
あまりにも感情的過ぎる文句のつけように、ナルトは食い下がって抗議する。
一言で嫌と言われるのも傷つくが、死んだ方がましとは聞き捨てならない。
「持久力だけは一級品じゃぞ?!何が嫌なんじゃ!」
『品性。』
身も蓋もない一言に2人まとめて撃沈した。
性格を指摘されたのと大差ない気もするが、品性下劣が原因と言われると人として立ち直れなさそうだ。
「何でじゃー、納得いかんぞい!おぬしだって〜〜!」
「うるさい。もう行く。」
後ろで口から泡を飛ばして抗議する老紫を無視して、鼠蛟はさっさと小鳥に化けて飛んでいった。
これはまた、強引な話の切り上げ方である。
もっとも付き合えば延々続く口論に付き合うほど、今は時間がないから当然か。
「うう、くやしいぞ〜い。」
ぶすっとした顔で、老紫が恨み節をつぶやく。
「あーあ……。」
「後で覚えとれむっつりスケベ……!!」
「むっつり……。」
老紫の捨て台詞を聞いた狐炎が、はぁっとため息をつく。
「むっつりか……隠す気もないぞ。あやつは……。」
訳知り顔で呟いた彼の言葉は、2人の耳には入っていなかった。


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つなぎを挟んで滝隠れに到着です。
尾獣を召喚するには莫大な力が必要というネタが出てますが、
召喚対象の力が多ければコストが上がる法則なので、多分今は尾獣を封印されている人柱力達が同じ位ハイコストになってるはず。
偽体を出してる当人達はあっさり呼びますが。
ちなみに現在人間側から呼び出せる召喚契約を交わしているのは、現在判明しているメンバーでは守鶴だけ。
ただし「理由:嫁だから」で実力は度外視のため、実際に呼ぶのは無理です。
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