※かなりのパラレルですが、ナルトはすれてません。
先に禁忌の子のミニ文を読むとわかりいいかもしれません。





あのね、こえんはね。
ときどきね、じーちゃんみたいにね、なでなでしてくれるの。
それでいつもね、夜にくるの。
夜にならないと、だめなんだって。
どうしてって、きいたの。
そしたらね。
「ないしょだから」だって。
みんなにはないしょだって、いわれたの。
こえんとおはなししたのは、ないしょなんだって。
だからね、これはぼくとこえんのひみつなの。
こえんがだいすきだから、ちゃんとおやくそくはまもるんだ。


  
冷たく優しい内緒人


「こえん、こえん。」
幼い子供の舌足らずな声が、すでに明かりの消された部屋で響く。年は、2つか3つか。
すでに普通の子供はみな寝ている時間だが、ナルトは夜中に起きてまで、この時間を待っていた。
まだ彼は時計の針の読み方も知らないが、
時刻で言えば大体午前0時を過ぎる頃に、彼の待ち人はどこからともなく窓に現れる。
そう、今日も。
表情に乏しい整った顔が目に映ると、ナルトの顔はたちまち嬉しそうにほころんだ。
「うるさい……何度も呼ばずとも、聞こえている。」
「だって、ずっとまってたもん。」
男が窓から音も立てずに部屋に入ると、ナルトは嬉しそうに彼の元に駆け寄った。
彼が待っていたのは、橙色の髪とザクロの目を持った若い男。
狐炎と名乗るその男の正体は、封印されているはずの九尾の妖狐。
かりそめの体を使い、週に2,3度夜に姿を見せるのだ。
「わかっている。」
狐炎がひょいと抱き上げてやると、ナルトは嬉しそうに肩にしがみついてきた。
彼が日頃いかに愛情に飢えているか、狐炎は知っている。
彼の内側から、彼の心も彼の周りもすべて見ているのだから。
だが、別にその境遇を哀れと思い、こうして夜にかまってやっているわけではない。
単なる退屈しのぎに過ぎないのだ。
「こえん、あのね。」
「何だ。」
ナルトはいつも、最初はその日身の回りで起きた事を話す。
まだ時間の概念がしっかりしていないため、3日くらい前のことを今日起きたように言うこともある。
もちろんナルトの中から彼の周囲を見ている狐炎は、言われなくても知っていることだ。
しかし、別に狐炎はそれをわずらわしいとは思っていない。
聞いていることを態度で示して、適当に相槌を打ってやればいいだけだ。
「またね、ちがう人がきたよ。
まえの人、ちょっとすきだったのに。いっちゃった……。」
「そうか。」
さみしそうなナルトの言葉に、短い相槌のみを淡々と返す。
ナルトの世話役は、5,6日という非常に早い周期で交代してしまうのだ。
もちろん、無力な子供に万一危害を加えるような事では困るので、火影の信頼できる者だけに限られるが。
そして交代周期が早い原因は、万一九尾の力が暴走した時のために備え、いざとなればためらいなく殺せるように。
建前上はそうなっている。
だが実は、世話役にナルトを懐かせないようにと、そのような事になっている。
そうさせているのは、他ならぬ火影。
万が一懐いた人に裏切られるような事があれば、幼い子供はどれほどの傷を心に負うか。
そうなればナルトの心は闇に閉ざされ、本当に妖魔のような暗く冷たい心を持ってしまうだろう。
それを案じたゆえの措置だった。しかし、幼いナルトにそんな悲しい親心が分かるわけもなく。
何よりも愛情に飢えた彼は、寂しい寂しいといつも心で泣いていた。
本来単独で生活する種族である狐炎だが、子供は大人の庇護と愛情が不可欠だということはよく知っている。
自身もかつては妻を娶り、子をもうけたこともある。
だから愛情を与えられぬ子が,どれほど悲惨なものかは推して量ることができた。
「ねぇ、こえんはいっちゃったりしない?またくるよね?」
「ああ、また来る。お前の世話役と一緒にするな。」
今まで幾度となく聞かれた質問。いい加減しつこいのだが、それでも狐炎はただ淡々と答える。
嫌がる顔も、変に慰めるような顔もしない。
それでもナルトは、それで満足だった。狐炎がそういう点では今まで嘘をついていないからだろう。
「うん、ぜったいだよ。」
「わかった。」
どうみても暖かい反応とはいえないが、それでも安心したナルトは嬉しそうな笑顔を見せた。
こんな笑顔を見せる相手は、ごく少ない。狐炎を除けば、3代目火影くらいだろう。
「……皮肉だな。」
同族という意味においては仲間であるはずの人間に、疎んじられて突き放されて。
拠り所を失った小さな子供がすがるのは、古来より人間が恐れる大妖。
いや、そこしかないのだ。この子供がすがれる場所は。
人間で唯一彼に愛情を注ぐ人物は、多忙ゆえにほとんどナルトに会うことも出来ない。
だから、大して優しいわけでもない狐炎になつくのだろうか。
恐らく狐炎の正体を知っても、きっとナルトの小さな手は彼にすがりつくだろう。
同じ人間の方が、彼にとってはよほど恐ろしいものなのだから。
「こえん?」
不思議そうな目が、狐炎を見る。
「気にするな。なんでもない。」
「そうなの?」
「そうだ。」
ナルトはまだ不思議そうな顔しているが、すぐにどうでも良くなってしまったらしく、
別の話を切り出した。
「ねぇ、こえん。」
「……?」
一時よそにそらしていた目を、再びナルトに戻す。
話を聞いてやるという、狐炎の無言の意思表示である。彼は少し間を置いて、こう言った。
「ぼく、『ばけもの』?」
「……誰が言っていた?」
聞かなくても、もちろんナルトの中から見ていたから知っている。
今日の昼間、ナルトが世話役から少し離れて廊下を歩いていた時のことだ。
火影の館に仕える下働きの女が、ナルトがすれ違う時に声を潜めて言っていたのである。
化け物だ、と。早く死んでしまえ、と。
幸い後半は本人に聞こえなかったようだが、化け物の部分はしっかり聞こえてしまったらしい。
「おとなの人がいってたの。
ねぇ、ぼく『ばけもの』?」
化け物と言った時に、女がナルトに向けた憎悪のまなざしを思い出したのだろう。
ナルトは、心底不安そうに狐炎に訴えた。
「お前はただの子供だ。力も無い、大人がいなければ生きられもしない。
そんなお前が、化け物であるものか。」
ナルトはただの封印の器。器自体には、何の力も無い。水の入っていないコップに、のどを潤す力がないように。
真の化け物は、封印された九尾の妖狐・狐炎。
だから人間がナルトを化け物呼ばわりするのは、筋違いもはなはだしい。
木の葉の民の同胞を殺めたのは、あくまでもナルトの内側にいる狐炎である。
ナルトはむしろ被害者だ。自らの意思とは無関係のことで、疎まれ虐げられるのだから。
「じゃあ、ばけものって、何?」
「化け物は、もっと強く恐いものだ。」
「つよくて、こわいの?」
きょとんとした様子で、ナルトは狐炎の言葉に聞き入っている。
世界を知らぬ透き通った瞳。こんな無垢な目をした『化け物』など、いるわけがない。
誤った先入観で濁った人間共の目には、こんな輝きも見えはしないだろうが。
「そうだ。自分達が勝てないもの、怖いものを人は化け物と呼ぶ。」
そう、彼らは恐ろしいのだ。圧倒的な力を持つ妖魔の事が。
人の身では決して敵わない力を持つ存在であるが故に。
「じゃあ、なんでばけものって、いわれたんだろ……?」
「さて、な。」
真実を教えてやってもいいが、意味を理解することも出来ないだろう。
それに、幼子にはあまりに酷だ。
彼自身が犯したわけでもない罪を、濡れ衣よろしくかぶせる里の大人達。
真の化け物は狐炎かもしれないが、真に冷たく罪深いのは人間である彼らの方だ。
本来火影が信頼して任ずるはずの世話役の中にさえ、
何も知らぬ幼子に憎悪の矛先を向け、理由もなくののしりいたぶる者がいる。
しかもナルトの治癒力が高いのをいい事に、すぐに治ってしまうような傷ばかりつけて虐げるのだ。
ナルトはそれを、三代目火影には決して言わない。
と、いうよりもむしろ、言えないのだ。
幼いが故にうまく言えないし、言うなと脅されればそれだけで震え上がってしまう。
だから、ますます行いはエスカレートする。
普段の狐炎は冷ややかにその様を見ているが、ある時だけは止むを得ず手を下した事があった。
ざっと流れを説明すると、その時の経緯は以下のようなものであった。

普段は横面をはたく位で済む暴行が、その時だけは違っていた。
その日の世話役は一方的かつ身勝手に、自身の憎しみを激しい暴力という形で表したのだ。
このままでは、ナルトの命が奪われるのではないかと危惧するほどに。
あまりにも行き過ぎた行いは、諸々の理由もありついに狐炎を動かした。
まず実体を作り、姿はいつもと異なるものに変える。
唐突な侵入者を装うため、結界が張られている窓は避け、あえて扉の外から進入したように見せかけた。
次いで、つい今しがたまで暴行を受けていたナルトは、首根っこをつかんで部屋の外に放り出した。
邪魔だし、後で記憶が強烈に残ったら妖術をかけねばならないからだ。
それから世話係を殺したのだが、わざと最初だけ首の絞め加減を甘くしたら、
“なんで俺なんだ。やるんならこの化け物だろ。俺は悪くない。だから、殺さないでくれ!”
と、見苦しく言い逃れを始めた。
あまりの下らなさに、それ以上は続けさせずに一気に首をへし折った。
死に際に何を言い残すのか試してみたのだが、予想通りの実に下らない反応だ。
愚かな人間の世迷いごとに耳を傾けてやるほど、狐炎は甘くない。
そう思っていたら、騒ぎを聞きつけて、警備の者と思われる上忍が3人やってきた。
もちろんこんな相手、取るに足りない。
目撃者として仕立てるために、わざわざ騒がせたのだ。
だから一人だけ殺して、そのまま残りの追っ手は撒いた。
その後少しの間だけは、誰もナルトに手出しをしなかった事を記憶している。
殺しかねないほどの暴力にいたっては、もう今に至るまでは一度も起きていない。
それもそのはずで。
本来侵入者を決して許してはならない場所に侵入を許し、あまつさえ死人まで出たのだ。
おまけに、人間が原因をどうとったかは別として、ナルトはあざや打撲だらけのひどい有様。
三代目は激昂したであろう。
こうなれば、気持ちはどうあれさすがに自粛せざるを得ない。
自分達の長の怒りを買うということは、得策ではない。
それにいくら自分達のせいにならなくても、
たびたびナルトが危険にさらされていると知れれば、彼らの忍者としての資質自体を疑われるだろう。
それは彼らの誇りが許さない。
また、ナルトの部屋も火影の執務室の近くに移された。
すぐ隣というわけではないが、不穏な事をすればすぐに火影や側近が気配で気づくだろう。
それが、狐炎の真の狙いだった。
そのために、世話役を殺すにわざわざ人目につくように仕向けたのだ。
少々わずらわしい点もあったが、この上ない暇つぶしと憂さ晴らしといえば、そうだったかもしれない。

と、ここまでが事件とその後の顛末だ。
しかしここまで行かなくとも、畜生にも劣る行いは、以前も今もほとんど日常的に行われている。
まだナルトが生まれて間もない頃から予想はついていたが、妖魔の狐炎も反吐が出る思いだ。
そう思うのは、かつては狐炎が子狐達の父だったからかもしれない。
いかなる理由があろうと、同族の幼子を虐げる集団が健全であるわけがない。少なくとも、狐炎はそう思っていた。
もっとも、愚かで矮小な種族にその改善を期待するだけ無駄だろうが。
「ねぇ、ぼくがばけものだったら、きらいになっちゃう?」
「いいや。」
軽くかぶりを振って、ナルトの言葉を否定する。
真実を知る身からすれば、滑稽とすら感じかねない純粋な問い。
だが、聞いた方にとって見れば何より切実なこと。
ナルトにしてみれば、狐炎は甘える事を黙って許してくれる数少ない存在。
だから彼に見捨てられる事が何より怖いと、そのつぶらな双眸はおびえているのだ。
包み込むような温もりを手放したくないと。
普段は明るく振舞っているが、その明るさは見る影もない。心配せずとも、そのような事はないというのに。
「ほんとにほんと?」
「ああ。」
ぽんぽんと頭をなでてやると、ようやくこわばっていた体から力が抜けた。
ナルトはほっと小さな安堵の息を漏らして、またべったり甘えてくる。
本来ならば同じ人間の大人にこそ、こうして甘える事を許されるはずなのだが。
しかしナルトに関わった者で、甘えることを許したのは三代目火影のみ。
だからだろう、大して優しい言葉をかけるわけでもない狐炎に、ナルトがこうも懐いたのは。
狐炎のように表情の変化に乏しく、かつ言葉もそっけない者は、普通の子供なら怖がるはずだ。
「ふぁ……。」
「何だ、眠いのか?」
からかうように声をかけると、ナルトはむっとして見返してきた。
「ねむくなんてないもん……あふっ。」
誰がどう見ても眠そうにしているが、本人は意地を張って否定している。
もちろんそれには、ちゃんとわけがあるのだが。
「眠いのなら、おとなしく寝てしまえばよかろう。」
「やーだー……。
だって、そしたらこえん、帰っちゃうもん。ぜったいやーだー……。」
そうやって意思では睡眠を断固拒否していても、やはり本能の力は絶大かつ強烈だ。
目がとろとろし始め、後もうわずかで完全に寝てしまいそうである。
「きょおは、おきたらいないの、なしー……。」
それだけをはっきりしない語調で言い切ってから、ナルトはあっという間に夢に落ちた。
しかし狐炎の服だけはしっかり捕まえて、手を放す様子は微塵もない。
いつもはそれほどわがままを言う事はないのだが、その代わり言い出すと聞かない。
わがままを言ったくらいでは嫌われないという認識の裏返しだ。
「まったく……、今夜だけだ。」
我ながら甘い判断だが、次に来た時うるさくされるのもわずらわしい。
夜明け前にいったん起こして、いつものように窓から帰るそぶりを見せてから実体を消せばいいだろう。
少しばかり、外に出ている時間が延びるだけだ。この位のわがままならかわいいものである。
そう考えた狐炎は、ナルトを抱え直してから、窓の外に見える里を冷ややかなまなざしで見ていた。
愚かでつまらない、矮小な者達が巣食う集落を。


―一方その頃―
火影邸の近くを歩く、2人の暗部の男。
片方は大人、もう片方はまだ少年といった方がいい年である。
任務の帰りである2人は、夜も遅いが報告のために火影邸に赴いた。
と、2人のうち、少年の方が火影邸のある一箇所を見て足を止める。
一瞬、光の加減で人影が見えたのだ。
「どうした、カカシ。」
急に足を止めて一点を睨むカカシの様子に気がつき、先輩格の男が声をかける。
「ヒノキさん、今あの窓の所に見慣れない人影が見えませんでした?」
「ん……いや、俺には何も見えないが。だが、確かあそこはあの子がいるはず。
しかし今の時間は1人で寝かされているだろうに。」
どこか心配そうな物言い。
ヒノキは里の中では珍しく、ナルトに対して悪感情をさほど抱いていない人間の1人なのだ。
「え、あの子はあそこにいるんですか?」
「ああ。火影様の監視下においておかんと、何されるかわからんだろ。
ただでさえ、馬鹿な世話役どもがいじめるって言うのに。」
カカシ以外の人間が聞いたら、気が違っていると言われそうな言葉。
例え九尾が封じられていても、子供をいじめるのは間違っていると日頃から断言する男なので、当然だった。
「見に行きましょうか?」
「そうだな……お前が気がついたんなら、まず怪しい。」
ナルトがいる部屋の窓には、夜間のみ効果を表す強力な結界が張られている。
火影でなければ破る事は出来ない程のものだ。
また、扉にも特殊な鍵がかけられており、その扉にたどり着くためには火影の執務室の近くを通らなければいけない。
守りは、かなり厳重に固められているはずだ。
が、だからといってカカシが見た人影を、気のせいとして片付けることは妥当ではない。
「……。」
2人はうなずきあい、ぱっとその場から姿を消した。


「無粋な輩だな。そのような物々しい出で立ちで、子供の部屋に来るものではないぞ?」
くつくつと、低い笑い声が漏れる。
片腕に抱えられているのは、他でもないあの子供。
里の大人ならば誰でも知っている、九尾を腹に封じられた子供。
安心しきった様子で眠っていて、何も事情を知らなければ、彼が父親だといわれても信じてしまいそうだ。
2人の様子はそれくらい自然だった。
「あなたこそ、こんな時間にその子に何の用ですか。
この部屋は、許可無き者の立ち入りは禁じられている。立ち去らないのならば……。」
「どうすると?」
牽制するために暗部2人が身構えても、狐炎の顔には余裕の色があった。
当然だ。彼が本気を見せれば、それだけでこの2人くらいは葬れるのだから。
「……意味がわかっていないわけじゃないだろう、兄さん。」
「さあな。」
今の狐炎の頭の中には、ここでナルトに起きられたら面倒だとか、そちらの方しかない。
勿論その無関心な態度は、暗部2人を苛立たせた。面越しのカカシの目が一気に鋭くなる。
「あなた、我々を本気にさせるつもりですか?」
「心外だな。わしは、同胞に見捨てられた子供の相手をしてやっただけだ。
むしろお前達の方が、こやつにはよほど危険に見えるがな。」
それは2人とてわかっていたのだろう。
図星だったのか、一瞬虚を突かれたような彼らの動揺が空気を伝ってきた。
そう。詳しい事情は知らないが、確かにナルトにしてみれば、カカシ達2人の方が怖いに違いない。
火影やごく一部の人間を除き、ナルトの周囲には敵しか居ないのだから。
それを指摘され、カカシはますます静かに怒りを募らせる。
当然、自分達が愚弄されているとわかったからだ。
「何だと……!?」
「よせ。それより兄さん、あんたは一体何者だ?」
「知る必要などない。」
ナルトの前では決して見せない、妖魔の本性を彷彿とさせるような冷たいまなざし。
底知れぬ闇をはらんだその瞳は、幾多の死線をくぐり抜けたはずの暗部ですら戦慄させた。
『?!』
「知る前に、わしの眼前からお前達は消える。」
狐炎の目が愉快そうにすっと細くなった。
ザクロの瞳が、月光を受けて赤く輝く。そこで、彼ら2人の意識はぷっつりと途切れてしまったが。


「全く、とんだ邪魔が入ったな。」
不快極まりないといった様子で、狐炎が吐き捨てる。
すると、先程の不穏な気配で眠りが浅くなっていたらしく、ナルトがうっすらと目を開けて狐炎の顔を見る。
「んー……?」
「寝ていろ。」
こくりとうなずいて、ナルトは再び眠りにつく。
寝てしまっても帰っていないとわかって、安心したようだ。
ちなみに先程の暗部2人には、妖術をかけておいた。
妖術・記憶違え(たがえ)。記憶を消し、さらにそこに別の記憶を植えつける高等術だ。
記憶をたどる妖術・心中掌握も併用したため、狐炎の存在に気がついた段階から全て、彼らの記憶は完璧に書き換えられている。
今頃、何事もなかったかのようにその辺りをうろついているだろう。
本当は殺してしまっても良かったのだが、それでは後々面倒な事になる可能性も否定できない。
ついこの間もここで世話役を殺したばかりなので、あまりに頻発すれば不審さにも程がある。
ナルトに疑いがかかれば、自分にとっても損だ。
事後処理を考えれば、今回は割に合わない
―まだ、夜明けまでには時間があるな。―
隠形を使い、少しだけ自分も眠ってしまえば、ちょうどよく時間も潰せる上に安全だろう。
先程のような失態を二度は犯さない。
―妖術・隠形。
すっと、その場から2人の姿が消える。
続けてナルトのベッドに、眠るナルトの幻影を作り出して人目を欺けば完璧だ。
妖術は忍術とはまったく別の系統の術なので、霊力か妖力が強い者でなければ見破る事はまず不可能だ。
術を発動させた後、狐炎は壁際に座り込み目を閉じた。
夜は、ゆっくりと更けていく。


―END― ―戻る―

この話の狐炎(九尾)は、ナルトに対する扱いに呆れ返っているようです。
ナルト本人に関しては、暇つぶしにちょっと構ってやったら懐かれたので、以後も適当に構っている模様。暇つぶしに。
文中に出てきているヒノキさんは、カカシの先輩暗部。
イタチを出したかったんですが、年齢が足りないので急遽こしらえた一発キャラです。
奥さんの実家が保育園なので、子供が好きな人ですよ。
ちなみに、ちびナルトのセリフは打ってて楽しかったです。あんまり優しくないのに、狐炎にはすっかりなついています。
ちびナルトの生活環境については、もちろん完全捏造。
原作でしっかり書いてない分、手を加えやすいのでやりやすかったです。

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