※加流羅生存設定
            
たくらみ


この日、加流羅は傍から聞けばあほらしい、しかし大胆な計画を練っていた。
世の常といってしまえばそれまでだが、いつもいつも好き勝手されるのはつまらない。
普段口でも遊ばれているだけに、余計面白くないのだ。
たまには、相手が予想もしていないことをやって、一本取るとまでは行かなくても驚かせたい。
慎ましい方に入る加流羅だが、3人の子供を生んでいることを忘れてはいけない。
そういう事には人並みに慣れているし、知識も経験も生娘よりはよほど持っている。
もちろん、中には経験がない知識もまぎれているが、それでもだ。
女の方から男を食おうと目論むことは、加流羅とて出来た。

彼女はさっそく、1人頭の中で計画を練り始めた。
まず、どうやって起こさないように、あるいは目的を悟られないように近づくか。
最終的には病院に勤める薬師となっていた加流羅は、
アカデミーに通って修行した経験があるものの、下忍にならなかったのでその後は修行に打ち込んだようなことはない。
それでもアカデミー時代の名残で身のこなしは今でも軽い。
とは言っても、実力は下忍レベルに留まっている。
いくら抜き足で近づいたところで、気配にさとい守鶴は気がつくだろう。
と、いう事はいっそ堂々と近づいて行って、そこで狙えそうだと思ったら多少無理にでも仕掛けた方がよさそうである。
守鶴は加流羅に乱暴なことはしないので、広義での身の安全は磐石だ。
では、その後にいったいどうするか。
加流羅はしっかり考えた。あまり積極性のない自分に出来るのかどうか。
いっそ酒の力でも借りようかと思ったが、うっかり飲みすぎると目的の達成自体が危うい。
飲むにしても軽くにしておいて、酒のせいに出来る程度にする方がいいだろう。
何かのせいにしておけば、人間意外と出来てしまうときがあるものだ。
恥など捨ててしまえばいい。もう自分は3児の母なのだ。いまさら何も怖くないと思い込んでちょうどいいかもしれない。
そこまで考え終わった加流羅は、時を待つことにした。
日が沈み、月が高く上がるころを。

―夜―
その晩の守鶴は、既に夜更けにもかかわらず、床に直接座り込んでぼーっとしていた。
いや、正確に言えば明日の計画を練っていたのだが、傍目にはそう見えないほどまじめに考えていないだけだ。
考えていることが、明日どこか賭場を荒らすかどうかといった程度なので、
そもそもちゃんと腰をすえて考えることでもないのだが。
するとそこに、コンコンと部屋をノックする音が響く。
「加流羅ちゃんか?入っていいぜ。」
まだ加流羅は何も言っていないが、気配で見分けたらしい。
許しを得てから部屋に入り、守鶴の顔を見た。
当たり前だが、珍しいとは思いつつも警戒はしていない顔だ。
とりあえず、最初はクリア。そう加流羅は胸中でひとりごちる。ちなみに、酒は少しだけ飲んできた。
何となく気分がいいくらいでやめたので、これならたぶん大丈夫だろう。
「珍しいじゃねえか。どーした?」
「ちょっと寝つきが悪かったから、何となくね。」
「ふーん、なるほどなぁ。」
話をしながら、さりげなく隣に座る。そして、機会を窺う。
「部屋に1人で居ても退屈なんですもの。子供達だって、とっくに寝ちゃってるし。」
「だからって、真夜中に男の部屋にくるたぁ大胆じゃねーか。
期待してるって勘違いしちまうぞ?」
少々品のない守鶴の軽口。
いつもならとがめるところだが、今日の加流羅にとってはまたとない絶好の流れだ。
切り出すにしても一応は流れがある。潮流がこうも早くこちらを向くとは、ついているかもしれない。
「違うわ。」
「……ん?」
「今日は、いつもみたいに行かないんだから!」
「おわっ!」
ほとんど真横から突き飛ばすように、加流羅は守鶴に飛び掛った。
不意を突かれたのか、珍しく本気でびっくりしたような声が守鶴から上がった。
座っている格好から崩れて非常に安定が悪そうな守鶴の上に、そのまま加流羅は乗ってしまう。
そして、むしろ普段自分が守鶴にそうされる時よりもせっかちに衣類をはぎにかかった。
ここでさすがに加流羅の意図が読めた守鶴は、少々呆れている。
「おいおい、はったりでもいいからもうちょっと余裕見せろよ。」
少し上半身を起こして、加流羅を少し見下ろす格好になった守鶴は、どこからつっこもうか迷っているようにも見える。
「わ、私がどういう風にやったっていいでしょう?!」
「別にいいけどな、いったんちょっとどいてくれねぇ?
この半端な格好で上に乗られんのは、オレ様もちょっと勘弁なんだけどよ。」
「仕方ないわね……分かったわ。」
確かに加流羅も乗っかりにくかったので、その提案は素直に受け入れた。
しかし完全に体勢を直されても、直し方によっては困るので体を浮かせるくらいに留めておく。
とりあえず無茶な状態に近かった足は直せたらしいと確認すると、また加流羅は足と体の上に乗った。
そして、守鶴の胸板をいきなりきつく吸った。
「……っ。」
「……さっぱり付かないわね。いつも、私にはあんな簡単につけてくれちゃうくせに。
どこまで意地悪なの、あなたって。」
「人の体に文句つけんなよ……。」
思いっきり守鶴が呆れているが、それは無視して今度は守鶴の首筋をちろっとなめる。
いつもよくなめられるので、少し控えめながらお返してみたのだ。
首は彼もそれなりに敏感らしく、筋肉がややこわばったのを舌先で感じた。
「へぇ……これはなかなかやるじゃねぇか。」
「……そう言う割には、あなたまだまだ余裕じゃない。」
「さー、どうだかな。」
謎掛けのように言ってはぐらかしてくるが、声の調子と顔から察するに恐らくまだまだ余裕に違いない。
少しむっとした加流羅は、利き手で守鶴自身をそっと刺激してやった。
これならどうだといわんばかりのタイミングである。
そして、今度は加流羅の思惑通りにいった。
「っ……おい!」
「……クスッ。」
抗議する守鶴の様子に、思わず笑ってしまった。
普段自分が優位に立てることなどないので、ちょっと楽しくなっているのだ。
しかしそうは言っても、普段受身な加流羅は男性が感じる箇所を多く知らない。
だから、とりあえず普段自分がやられる事の一部をそのまま返してみる。
一応体は人間の形なのだし、共通するところもあるに違いないと踏んでのことだ。
邪魔しに来る羞恥心は頑張って頭の外に追いやって、
とりあえず少しは意味がありそうだったのでまたなめてみる。
「ん?」
くすぐったいのか気分がいいのか、守鶴が少し目を細めた。
何だか動物にでもなった気分になるが、気にせず続けた。
首、胸板、鎖骨、顔。とりあえず、自分の顔に近い辺りはほとんど手当たり次第だ。
「……何だか、何か違う気がするんだけど。」
確かに気持ちよさそうにはしているが、方向が違ってきた。
先程は合っていたはずなのだが、たぶん顔辺りで間違えた気がする。
顔をなめるのは犬のやることだろう。
「聞かれても答えようがねぇなー。」
「……そういう事しか言わないのね。」
何だか馬鹿にされた気がしてカチンと来た加流羅は、小技よりもやはり正攻法がいいと確信した。
そもそも女性の方が積極的な行為に全く慣れていないのだから、最初からそうするべきだったかもしれない。
ほとんど追放しかけだった羞恥心を完璧に近いまでに追い出してから、
守鶴のはかまを勝手にくつろげて、熱を持ったそれに直接触れた。
妖魔といえども男は男。守鶴の体がびくっと反応を示した。
「お前なっ……面白がってるだろ……!」
「だって、いつもは私が遊ばれてるんだもの。」
子供のように言い返しつつ、手は止めない。
さすがにこれを口に含む勇気は無かったので、そのまま指で刺激を与え続ける。
大きさも硬さも増していくそれを、加流羅は眺めてこう思った。
湯につけた麩みたいだと。そんないい物ではないのだが、彼女は何かずれている。
ついでに忘れていることも一つあった。
「さーて……気は済んだよなぁ?」
「えっ?ひゃうっ!」
ずり上がっていたワンピースの隙間から忍び込んだ守鶴の手が、加流羅の胸のラインをなぞった。
今まで意外なほどおとなしくしていた彼の反撃の一手。
つまり、もうおとなしくはしてやらないという意思表示である。
加流羅は忘れてしまっていたが、守鶴はどう考えてもおとなしくやられている性格ではない。
まして、この手の事でいつまでも女性に主導権を握らせるほど甘くもない。
あっという間に形勢がひっくり返る。
「あー……。」
そのうちこうなる事は最初に予想が付いていた。
今の今まで忘れていただけで。何しろ相手は、自分より遥かに力が強いのだ。
その気になればいつだって加流羅を組み敷ける。そう、今のように。
冷たい床が、加流羅で勝手に暖を取っているのがわかった。
「おかげで、さっきからずーっと冷たかったぜ〜。
……ま、散々好き放題してくれちまったけど、女が体冷やすのは良くねぇからな。床は勘弁してやるよ。」
そう言って、加流羅の体をひょいっと抱えて側のベッドに下ろした。
ここからはもう、彼の思うがままだろう。いつもそうであるように。
「お、怒って、る?あ、あはははは……・。」
乾いたごまかし笑いが唇からもれる。
ちょっと調子に乗りすぎたかもしれないと、やってしまった後で後悔しても結構遅い。
「別に怒っちゃいねーよ。悪くは無かったからな。
……でもよ、そっちが誘ったんだから覚悟はしとけ。」
「え゛……どういう意味?」
「さーなー。結果は見てのお楽しみって奴だ。」
そう言って腹黒く笑った守鶴の顔は、ドSという形容が実に的確だった。

己の内部を支配する熱いそれに中心を貫かれ、加流羅は上がった息で何度となくあえいでいた。
「ひゃぁ……うっ、ふうぅ……!」
滴る蜜は太ももに伝いシーツを汚す。
何度となく高みに上り詰めさせられて、もはや彼女と守鶴の境目自体が怪しい。
少なくとも、加流羅の側の意識は曖昧だ。
既に秘所は互いの粘液でどろどろで、溢れかけているのではないかと思うくらいだ。
上がる嬌声も、疲れからか段々と声量が落ちていた。
「あぅ……もぉ……ゆる、してぇ……。」
しかしそれでも、快感の波は容赦なく襲ってくる。しかも、まるで津波のように激しい。
溺死させる気かと言うほどの快楽。心ではもうやめてと叫んでいるのに、体は律儀に反応するのが恨めしい。
むしろ、己を知り尽くした守鶴の意にこそ従っているかのようだ。
「そーかぁ?オメーのここはもっと欲しそうに見えるぜ……。」
「やぁ……っそんな事、言わない、で……やぁぁぁ!!」
また高みに上り詰めてしまった加流羅の背が、弓のように反った。
中心では守鶴の情欲を受け止めている。際限がないのではないかと疑わしいくらいのそれを。
一体何度目かは、もう数えていない。だが、既に普段及ぶ回数の倍以上は行っている。
段々2桁に近づいているのではないかという、危機感が募る程度は堅いだろう。
しかし考えてみれば、どこからどこまでで1回と数えるのか、その基準自体があやふやだ。
数えられるのかすらも怪しい。
「うーっ……。」
加流羅が恨めしげに見返した守鶴の顔は、多少汗が見てとれるものの疲れた様子がさっぱりない。
しかも、何だかものすごく楽しそうですらある。やっぱりドSといってもいいだろう。
もっともこの事態を誘発したのは、半分は彼女の責任なのだが。
妙な気は起こすものではない。おかげで今、死ぬほど後悔している真っ最中なのだから。
「さーて……どこまで持つか楽しみだな。
まあ今日のオメーは最初から乗り気だったし、平気だろうけどよ。」
「ま、まだ、やるのぉ……?!」
とりあえず一つだけいえることは、キリがないということだった。

翌朝。
丸一日起きられなくなった加流羅は、もう守鶴の寝込みを襲うのはやめようと固く心に誓った。
昨日の記憶は酒のせいでもないのに途中で飛んでいて、気がついたら自分の部屋で寝ていた次第なのだ。
守鶴の部屋で起きる羽目にならなかったことは感謝するが、他は泣きたい要素で一杯だ。
見た目はどうあれ正体は妖魔で、性格がいわゆるドSに属する彼。
うっかり床の中でそのドS要素を起こしてしまうとどうなるか、嫌というほど思い知った。
加流羅は、体で分からせるという言葉の真の意味が少し分かったような気がする。
「四人目が出来たら、責任とってよ……馬鹿ぁぁ〜〜〜……。」
誰も周囲に居ない部屋で、情けない叫びが漏れた。

教訓。慣れぬ事は、たとえ如何なる事でも致さぬが吉。玄人に喧嘩を売るべからず。
ちなみにこの後、守鶴が責任を取るような事に発展したかどうかは謎である。
もっとも発展したところで、彼は別に困りはしないのだが。


―END―  ―戻る―

毛色を違う話を書こうと思いました。ギャグっぽくなりました。
特に反省はしていませんが、加流羅のキャラが微妙に壊れてます。
実は女性から誘う?話を書いたのは初めてです。途中笑いかけつつ書いていたのはここだけの話。
結局返り討ちに遭うのはお約束ですよ、はい。
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