ミニ文置き場
絵が古くなって捨てられたせいで、文だけになっちゃったミニ文の墓場。
文章は一部加筆修正済み。リンクを押すとそれぞれの頭のミニ文へ飛びます。

・尾獣&人柱力
(ギャグ
ナルト&狐炎・・守鶴&我愛羅・♀ナルト&狐炎×2
普通〜シリアス
ナルト&狐炎×2・一尾S&九尾S・守鶴×加流羅)
・暁
(ギャグ
イタチ&デイダラ×2・イタ&デイ&ゼツ&鮫&サソ・サソリ・
普通〜シリアス
イタチ&デイダラ)


―戻る―






















































Title:聞くは一時の恥
夜9時30分。
まだまだこれからが夜本番という頃、
ナルトはサスケに負けたくない一心で、イルカお勧めの忍術書を勉強し始めた。
彼曰く、「ナルトのような若い下忍でもわかりやすい」とのことだ。
「ほう、忍術書か。お前に理解できるのか?」
「ほっとけってばよ!このぐらい、おれにもわかるってば!」
そう言って読み進めるうちに、だんだんナルトの読解スピードが落ちていった。
漢字が読めない。
いくらわかりやすいといっても、れっきとした専門書。
振り仮名が少ないので分からないところは飛ばして読む。
飛ばして読むと意味が繋がらない。意味が分からなければ、理解が出来なくなってくる。
だんだん脂汗がナルトの頬を伝い始めた。
辞書は持っていないし、あっても引き方が分からない。ならば。
「……狐炎ー、あのさぁ〜……。」
「なんだ、分かるのではなかったのか?」
皮肉たっぷりな言葉と横顔。
だが、ここで意地を張ったら全てが水の泡だ。
授業中に寝てばかりいたナルトは知らない言葉であるが、聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥と言う。
そのことわざを体現するかのように、意を決して言葉を続ける。
「その、漢字、教えてくれってばよ……。」
「……阿呆。」
そんな事だろうと思ったといいたげな、呆れかえった様子。
予想はしていたが、いざ見ると平静でいられない。
「よ、読めればちゃんと分かるんだってばよ!
だからさ、読み方教えてくんない?」
「……ついでに、意味も知らぬだろう?」
「え?!意味も教えてくれるの?!やったー!」
いつもはチャクラでさえも頼まないと貸してくれないような奴が、
読み方のみならず意味まで教えてくれるとは。
これにはナルトは喜びを隠せない。が、その行動が仇になる。
「……やはり分かっていなかったな。
予想通りの反応を返す奴め。」
馬鹿にしきった狐炎の言葉。
そこで初めて、ナルトは自分がはめられた事を知った。
「ぎゃー、さり気に誘導尋問されたってばよーー!!」
「フン、未熟者め。わしの目をごまかすなど1000年早いわ。」
騒いでも後の祭り。
見事に自分の勉強不足をばらしてしまったナルトは、
屈辱に震えつつ、聞きたい事だけはちゃっかり全部聞いたという。

▼ナルトは生き字引を手に入れた

:まずは辞書の引き方から教わった方がいいようです。


Title:力の代償・その後
暁が、守鶴の憑依先を押し付けあってる頃。
当の本人と我愛羅は、目玉だらけの巨大装置の裏で脱出工作を始めていた。
正確には、守鶴が何かやろうと企んでいるのだが。
“ほ、本当に脱出できるのか??”
「あたぼうよ。砂の守鶴様をなめんじゃねぇ。
結界なんざ、媒体ごとぶっこわしゃいいんだよ。」
媒体とはこの場合壁のことをさすのだろう。
しかし、ずいぶん乱暴な話である。凄まじい爆発音などを巻き起こしたりしないのだろうか。
“おい、バレたらどうするんだ?!”
「は?まんまズラかるに決まってんじゃねぇか。
んだよ、幽霊はおとなしく風船やってろってんだ。」
“風船……そういえば、この紐は何なんだ?何で魂が縛れるんだ?”
そう言って我愛羅はチラッと自分の尻尾らしきもの、つまり魂の末端に目をやる。
そこにはカラフルで艶やかなリボンに似た紐が、ぎっちぎちに結わかれていた。
反対側の端は、抜け殻状態の肉体の服の一部に結ばれている。
「そりゃ、妖魔の秘密道具だし。」
“……よく分からない説明だな。
しかし、くそ結びにしたあげくぎりぎり締め付ける事はないだろう。
魂の尻尾……?あの辺が痛くて仕方ないんだ。”
ヒモは見事なくそ結びで、絹製なのか良く締まる。
魂に何故痛覚があるのかは知らないが、食い込んで痛いことこの上ない。
「うっせぇな。ガス入り風船だって、ギリギリ巻いてんだからいいんだよ!
あんまりガタガタ抜かしてっと、そのヒモほどいてマジもんの風船にすっぞ。
ぷわぷわって、あの世まで飛んでっちまえ。」
“そ、それだけはやめてくれ……まだ死にたくない!
やり残した事が山ほどあるし、そうでなくても俺はこんな所で死んでられないんだ!!”
もう、本当に助ける気があるのかどうか分かったものではないが、
何に触ってもすり抜ける身に選択権はなかった。今は神ならぬ守鶴頼みしかない。
たとえ人の魂の尻尾に、得体の知れないヒモをくそ結びにする奴でも、だ。
「へいへい。ま、ともかくオレ様に任しときな。
見つかるなんてヘマしねぇよ。お、貫通した。よっしゃ、ズラかるぜ〜♪」
“よ、よかった……。って、俺の体を引きずらないでくれ〜〜!!
戦った時の傷が、傷口が〜〜〜!!”
モグラのような穴をさっさと掘り終わった守鶴は、
すぐに我愛羅の肉体の首根っこを捕まえて穴の中へ。
土の中を引きずられたら傷口から菌が入って化膿するなどと、妙にずれた事で我愛羅は悲鳴を上げた。
それよりも魂が外に出ている今の状態が続く方が、よっぽど危険なのだが。
「あ゛〜、うるせぇな!後で気が向いたら、丸洗いするから心配すんなって。
こまけぇこと気にすんな。ハゲっぞ。」
“俺はTシャツと同レベルなのか?!
だから、ひきずるなって……あ゛ーーー!!”
まるで聞いてもらえないまま肉体はどんどん引きずられて完全に穴の中へ。
当然、ヒモに繋がれた我愛羅の魂も一緒に引きずられる。
我愛羅が向いていた角度が悪かったのか、魂が半分以上地中に埋まった状態で。
リアルに地中の断面図を見るという貴重な体験だが、状況が状況だけに全く嬉しくない。
と、そこでようやく光が目に入った。
“よかった……何とか外に出たな。おい守鶴、早く安全なところに……。”
ひとまず安心してふうっと息をつく。が、運命の女神はどこまでも意地悪だった。
「おーし、一丁上がり〜。
さーて、久々のシャバだし、なんか食いに行くか。ヒャッホーイ♪」
“言ってるそばからっ……!!
頼むから、人の話を聞いてくれーーー!!!”
我愛羅の受難は、終わらない。

:我愛羅関係には珍しく原作沿いの小ネタです。


Title:天然娘には首輪
「ねー狐炎〜。」
「何だ。」
ナルトは涙目になりながら、背中合わせの位置に居る狐炎に話しかけた。
返ってきた狐炎の声は、無感情ではなく不機嫌そうである。
「もうサスケとかキバ達とかの前で下着になんないから、
おかず減らさないでよ〜……。」
本日ナルトは、同期の男子陣の前でいつも自宅でしているように上着を脱いだ。
中が下着一枚の状態で。12歳とはいえもう体は立派な少女体型。
胸も多少ある。いきなり上が下着一丁という姿になっていい年ではない。
哀れ被害を受けたウブなお年頃のK・I氏や、不意打ちに腹を立てたS・U氏が狐炎にそれをばらしたため、
ナルトは罰として夕のおかずを一品減らされることになっている。
もちろんナルトは食べ盛り。そんな仕打ちはごめんである。
だからこうして頼んでいるが反応はそっけない。
「黙れ。胃袋にはきっちり思い知らせておかんとな。」
背中越しに声が返ってきたので顔は見えないが、多分いつもの無表情でこのセリフ。
「うわーん、鬼ー!悪魔ー!」
「ほめ言葉として受け取っておこう。」
ナルトの抗議と罵詈雑言もさらっと受け流してこのセリフ。
しつけのためならということとは関係なく、彼はナルトの非難くらいでたじろぐような性格ではない。
「う〜……この化――。」
よほど頭にきたのか、ついにナルトは禁句を口にしかけた。
すると空気が一瞬で凍った。
「その先を言ったら晩飯抜きだと思え。」
そして降ってきたのはいつもより一段低い声の脅し。
目どころか顔も合わせていないのに、背筋も凍るド迫力だった。
その迫力もさることながら、脅し文句でナルトの顔から血の気が引いた。
「ごめんなさい。」
それだけは勘弁してという代わりに、ナルトは間髪いれずに謝った。

:最低限のつつしみもないお嬢さん。


Title:虚しい否定
最近、ナルトは「ブラコン」とよく言われる。
何で?と戸惑う天然なナルトは、その理由にさっぱり気がついていなかった。
今日も道で会ったシカマルとキバに、「お前のブラコンって、一生直らなさそうだな。」といわれる始末。
が、ナルトは腹は立っても言われる理由はやはりわからない。
無論、ナルトになつかれる狐炎はちゃんと理由を知っている。
知らぬは本人ばかりなり、だ。
「ねー、何であたしってば、ブラコンって言われるのかな?
そんなつもりないんだけどな〜……。」
どことなく嫌そうな顔をする狐炎のことなどお構いなしに、ナルトは彼の袖をつかみながらたずねてみた。
すると、ため息と共に返事が降ってくる。
「言われたくなければ、まず袖をつかむのをやめろ。」
「え、なんで?!いいじゃん別に〜!」
必要以上に引っ付くのが、「ブラコン」呼ばわりされる理由のひとつなのに。
ナルトは狐炎の忠告の意味を全くわかっていなかった。
彼女がブラコンの汚名を払拭できる日は、果てしなく遠い。


:ブラコンは便宜上の形容詞。


Title:禁忌の子
あの忌々しき人間が残したもの
穢れも清きも知らぬ無垢な赤子
やがてこやつは知るであろう
人のむごさと浅ましさを
なあ、四代目火影とやら
そういえばお主は、今際の際にこう言ったな
「この子を頼むと」
だが、お主のその最後の頼みを一体何人が聞き届けよう
わしは知っている
何の力も持たぬこの赤子にすら、お前の愚かな同胞は怒りを向けるだろう
口も利けぬこの小さな器がなければ、自分達の住処は跡形もなく消し飛んだというのに、だ

ナルト
何も知らずに眠るその姿、それすら見ることなくお前の父は黄泉へと消えた
そういえばお前は父亡き後、抱こうとした里の忍を見て泣いたな
その者が知らずのうちに抱いた感情を見抜いたか
口が利けぬ分、そちらの感覚は鋭敏なのだろうが
しかしおかしなものだ
わしの腕に抱かれる今は、まるで全てを委ねたかのような顔をして眠っているというのにな
お前が信じられるのは同種ではなく、異形の妖魔しかないとでもいうつもりか?
別にわしはそれでもかまわぬがな

ナルト

いずれお前は、同胞であるはずの里の者に虐げられるようになるだろう
命を奪おうとする輩も、遠からず現れる
だが、お前は死なぬ
護ってやろう、このわしが
その命の火が消えぬように、わし自身を消さぬために
それともう一つ
お前が真に力を欲するその時
くれてやろう、我が力
その力で恨みを晴らすも、愛する者を護るもお前次第
さて、お前はわしの力を何に使うのであろうな

何も知らぬ赤子を抱え、わしは嗤う
忌まれる運命を背負った赤子を
愚直なまでに同胞を信じ、散っていった若造を
恩も義も心得ぬ、愚かな里を

:狐炎独白。うちの彼らしさが出たえらく皮肉めいた物言いです。


Title:金色の月(禁忌の子のおまけ

ふと夜中に目が覚めたわしは、ナルトの事が気になってあの子を寝かせている部屋に向かった。
わしの部屋を通らなければ行くことのできない部屋が、ナルトの部屋。
1人で寝かせているためか、あの子はよく夜中に泣く。
ところが今夜に限ってはあの泣き声が聞こえず、
不思議に思いながらわしは部屋に足を踏み入れた。
そして、見たことのない男の姿に身構えた。
「お、お主……何者じゃ?!」
「騒ぐな。不穏な気配を察すれば、赤子が泣くぞ。」
まだ首も据わらないナルトを抱えた男は、抑えた低い声でそう制した。
鋭い光を宿した冷たい赤い目と、鮮やかな朱色の髪を持った男。
はて、こんな男が里に居ただろうか。
ともかく、ナルトに危害を加える様子はない。
それだけ分かったわしは、ようやく警戒を解くことができた。
「……どこからやってきた。」
「外だ。」
一言だけ、ぶっきらぼうに返された返事。
人を食ったような発言から、まともに答える気はないと判断した。
「一つ聞く。」
「何じゃ。」
今度は向こうから質問をわしに投げてきた。
皮肉めいた男の表情は、わしの心をざわつかせる。
「お前は、この赤子が里に受け入れられると思っているのか?」
「……すぐには無理かもしれん。だが、いつか……。」
本当はこの子が疎まれることを恐れている。だが、希望は捨てたくは無かった。
「フン、世迷い事を。さて……そろそろ帰るか。」
そう男が呟いてナルトをベッドにおろそうとしたとたん、その気配に目を覚ましたナルトが顔をしかめた。
他の赤子以上に、ナルトは腕から下ろされることを嫌う。
一度おろされてしまえば、それから何時間もかまってもらえないことを知っているのだ。
こと、夜は。
「うぇっ……。」
「いちいち泣くな。気が向けば、また構ってやってもいい。」
ぐずるナルトを元のようにベッドに寝かせると、たちどころに男は消えてしまった。
瞬身ではない。どうやら存在自体が掻き消えたようだ。
多分、妖魔の類だろう。
さみしいとぐずるナルトを抱き上げてあやしてやって、どうにか落ち着かせる。
「のう、ナルト……あの男の事を、知っておるのか?」
「あう?」
きょとんとした様子で、わしの顔を見上げるナルト。
この子に背負わされた運命を思うと、人の業の深さを呪ってしまう。
「すまぬの……。」
この里の長たる自分でも防ぎ切れない里の怒りと嘆き。
何の罪もないこの子に、どれほどの理不尽な仕打ちが降りかかる事か。
九尾をその身に宿すのは本人の意思ではないというのに。
そう思いながら、わしは先程の男を思い出す。
彼は、もしや。
「まさか、の……。」
あの人ならざる存在が、こんな小さな赤子を気にかけるわけがない。
いかに己の器であろうとも。だが。
「今日だけは、じいと一緒じゃ。」
「あうー。」
綿毛のような金の髪をなでて、今宵はそのまま自室に連れて行くことにした。
おろせばまた泣いてしまう。
一晩のうちにそう何度も泣き顔を見るのは忍びない。
「……今日だけは、の。」
ナルトではなく、わし自身にそう言い聞かせる。
それから自分の部屋に戻って、ナルトを同じベッドに寝かせた。
窓からのぞいた金色の月。
その月は、九尾が里を襲った時と瓜二つじゃった。
だからだろうか。わしは、天に願いを捧げた。

九つの尾を持つ大妖よ
どうか、頼む
厚かましいと分かっている
分不相応な願いだということも
けれどもどうか、願う事だけは許して欲しい

稲荷神社の祭神よ
五穀を守護すると謳われる穀物の神よ
どうかこの子を護っておくれ
木の葉に芽吹いた、小さな芽を
風にそよぐ稲穂の海を猛り狂う自然から護るように、
過酷な運命の荒波から、どうかこの子を護っておくれ

:唯一、三代目火影が主役の話。彼がどの程度養育に関わっていたか気になります。


Title:妖の狂宴
気がついたら、囲まれていた。
「げ……い、いつの間にこんなにいたんだってばよ?!」
「……まずいな、数が多い。」
どこの所属かは知らないが、周りを取り囲むのは精鋭の忍者達。
ナルトと我愛羅に緊張が走る。
事情があり、任務を共に遂行していた砂と木の葉の2班。
しかし途中で待ち伏せにあい、2人は仲間からはぐれてしまった。
チャクラも残り少なく、特にナルトは傷も深い。
そこにこの襲撃。疲労から注意力が低下していたとはいえ、うかつだった。
「ナルト、ここは俺が……。」
チャクラはもはや残り少なく、我愛羅も砂は防御用に温存せざるを得ないほど低下していた。
それでも手負いのナルトに戦わせるわけには行かない。
だがナルトは守られることを良しとせず、よろけながらもクナイを構えた。
「おれだけ見てるわけにはいかないってば……ッ!!」
「ナルト!」
敵の忍者の風魔手裏剣が、傷の痛みで動きを止めたナルトを狙う。
しかしそれはナルトに到達する前に、キィンという金属音を立てて叩き落される。
それと同時に現れたのは2つの影。
「ひゃっほー、殺りたい放題だぜ!なぁ、狐炎?」
「ふ……そうだな。」
現れた影の正体は、2人の男。
ナルトと我愛羅、それぞれの身に封じられている2体の妖魔。
砂の守鶴と九尾の狐炎。
風魔手裏剣を叩き落したのは、刀を構えた狐炎だ。
「しゅ、守鶴……それに……!」
「こ、狐炎!?」
予期せぬ登場に、敵はもちろんナルトと我愛羅も動揺を隠せない。
先程まで助けてくれなかっただけに、余計混乱する。
それとも本当の危機と察したからこそ、出てきたのだろうか。
「な、何だ……新手か?!」
「貴様ら、何者だ?!」
突然現れた2人に、忍者達は動揺を隠せない。
この状況だというのにどこか楽しそうな2人に、底知れぬ恐ろしさを感じたのだ。
「へ、何で雑魚にんなこと教えなきゃいけねぇんだ?
テメーらごとき、オレ様1人でも十分だっつーの!」
「な、何だと?!」
「無駄に煽るな。
それと我愛羅、お前はあの砂の繭でナルトと共に隠れていろ。」
有無を言わせぬ命令。
特に手負いのナルトは、はっきり言って足手まといだ。
「……わかった。」
「うぅ……今回はよろしく。」
珍しく、ナルトもおとなしく引き下がった。
この2人の実力は十分すぎるほど知っている。
はっきりいって、器である自分達よりもはるかに強いのだ。
普段貸されている力が、ほんの毛ほどとしか思えない程。
恐らくものの5分も経たないうちに、周りは血の海に浸かるだろう。
我愛羅はすぐさま、普段は完全体に移行する際に使う砂の殻を形成する。
この堅牢な守りを持ってすれば、相手の攻撃など物の数ではない。
今はあまり長時間の維持ができないが、それでも十分であろう事は予想に難くなかった。
「さーて、ガキ共もすっこんだし……始めようぜ。」
「ああ、もちろん……少しは楽しめるとよいのだが。」
フッと狐炎が嘲笑を浮かべる。
品定めするような瞳は全てを凍らせるほどに冷たい。
「は、そりゃちーと期待出来そうもねぇぞ?」
「やれやれ……そのようだな。」
出てきた時は押さえていた妖力とチャクラを解放した程度で、人形のように凍り付いてしまうようでは。
彼ら2人のかりそめの体に宿る力は、本来よりも少ない。
それでおののいているようでは、妖魔を戦いで楽しませてはくれないだろう。
絶対的な力の前にひれ伏した哀れな人間達。
いっそ相手の実力が分からないほど愚かだったら、まだ楽だったろうに。
そして、血の宴が幕を開ける。

:不運なのはむしろ敵側かも知れません。


Title:虚地が写す真

妖術が作った夢の中の世界。
術者である守鶴が加流羅と会うためだけに生まれた世界で、その主はいつも彼女に優しい。
「泣きたけりゃ、泣いてもいいんだぜ。」
どうして欲しい言葉を、この妖魔は知っているのだろう。
こぼれた涙は溜め込んでいた悲しみのかけらか、あるいは甘えられる事の嬉しさか。
どちらともつかない涙の意味は、加流羅自身知らない。
ただ、添えられた手のぬくもりを手放すことだけは考えもしなかった。
むしろ、それを離さぬように握り締めたいくらいだった。
家族を悲しませたくないばかりに現実では泣くこともできない彼女は、それでも彼の前でなら泣いてもいいかもしれないと感じた。
何故という理屈は説明することが出来ないが、ただそう思わせる何かが彼にはあるのだろう。
「すがっても、いいの?」
答えは返ってこなかったが、その代わりに守鶴は少し笑って彼女を抱き寄せた。
その腕のぬくもりは、架空の空間の中の確かな存在。
では加流羅の黄朽葉色の髪をすく手の優しさは、まやかしだろうか真実だろうか。
どちらであっても構わないと、加流羅は思う。
優しい嘘であるならば、死の時までだまされても構いはしない。
何よりも壊れそうな心を守るものを欲する彼女は、悲しい微笑を浮かべた。

:時系列は我愛羅誕生前。出会ってからあまり間がない頃の話です。


―戻る―























































Title:追いかけっこ中
ちょっとしたいたずら心だった。
そもそも娯楽の少ない日常。たまには他人をからかいでもしないとやっていられない。
「デイダラ、ちょっとこっち向け。」
うまくいけば儲けもの。
が、イタチの悪巧みなど知るよしもないデイダラは、くるっとあっさり振り向いた。
「ん?何?」
ひょい。
「あ、おい何すんだよぉ?!」
「取った。」
悪びれない様子でひらひらと手を振るイタチが持っているのは、デイダラの額当て。
「何言ってんだよ。額当て返せよ……もう。」
何考えてるんだよと、デイダラは少々むくれる。
子供っぽい反応があまりにお約束的だ。が、悪ノリしたイタチはさらにこんな手に出る。
暇つぶしには、この後怒らせるのが一番手っ取り早い。
「返して欲しかったら実力で取りに来い。」
「はぁっ?!あ、おいこら待てよイタチ!!」
そして何を思ったのかイタチは逃走。
一体何がしたいんだと思ったが、疑問について考える暇はない。
後を追ってデイダラも駆け出していった。

―20分後―
いつの間にか双方本気になっていたようで、
額当て争奪バトルの会場と化した森は凄惨たる有様だ。
木にクナイは突き刺さるわ、何を考えていたのか千本で「バカ」と書かれるわ、あまつさえ起爆札らしきものが炸裂した痕跡もある。
そしてムキになって追いかけていたせいか、
デイダラは枝か何かに引っ掛けて髪留めの紐までなくしていた。
「〜っ!!イタチ〜、さっさと出てこーい!
そろそろ鳥だすぞ、うん。」
しかし、それでもイタチは出てこない。
これくらいの脅しで出てくるような素直な人間だったら、そもそもこうはならないだろう。
(そこまでムキにならなくてもいいだろうが。)
そういうイタチも髪に葉っぱや枝が山ほど絡んでいる。
認めていないだけで、まったく人のことが言えない状況だった。
「これでも出てこない気か?
ふ〜ん、別にいいけどな、うん。」
(あきらめたのか?いやそんなまさか。)
ここまで意地になって追い掛け回してきたのだから、今さらあきらめるなどありえない。
どういうつもりなのだろうか。
「冷凍庫の雪の実大福、オイラが全部食べとくから、うん。」
(!!)
聞き捨てならない一言。
イタチが楽しみに取っておいたあの白く冷たく甘い食物が、全部デイダラの口に消えてしまう。
これはイタチにとって由々しき事態だ。
「ま、待てデイダラ!わかった……額当ては返す!
だからアレを食わないでくれ!!」
弟が見たら絶句するであろう必死の形相で、イタチは隠れていた木の上から文字通り降ってきた。
着地だけは見事だが、あまりの必死さにデイダラは腹を抱えて笑い出す。
某弟君が見たら、「何で俺がこんなやつにぃぃぃ!!」とリミットブレイクすること請け合いだ。
「あっはっははは〜、思ったとおりだな、うん。
でもそんな般若みたいな顔するなよ。キサメみたいになるぞ。」
「俺をあのサメと一緒にするな。」
「そう怒るなって。ほら、帰ったら冷蔵庫行こうな、うん。」
不服そうなイタチの顔を見て、デイダラはこっそり勝ったとほくそ笑む。
傍から見れば相当低レベルな争いは、こうして幕を閉じた。

額当て争奪バトル・勝者デイダラ。

Title:モチーフは例のサメ
「オイラの新作だよ〜。どうかな?モデルはあのキモいサメだけどさ。」
暇に任せて作られた一体のサメの置物。
キモいサメとは、当然鬼鮫の事である。
「んー……モリがもう1,2本欲しいな。」
「そぉ?でもこれは芸術作品だからな〜……うーん。
ま、気が向いたら後で改良しとくよ。」
「ところでこれ、本人は見たのか?」
「あ、うん。でも全ッ然気がついてなかったけどな。
『私の仲間に何てことするんですか〜!』とか、まーたウザい事言ってきたから爆破した♪」
「実に賢明な判断だな。」
「だろ〜?」
こうして2人がサメをネタにして笑っている頃、
置物のモデルである鬼鮫は、黒焦げになってゴミ同然の姿で転がっていたために、
サソリに生ゴミの袋につめられてしまったという。


Title:ニュー・シーマン
ある日、俺は暇だったのでペットショップに出向いた。
別に動物が好きなわけではないが、いつもと違う暇つぶしがしたかった。
だが水槽を見た瞬間に俺の思考回路は停止した。
「イタチさ〜ん、私を買ってくださいよ〜♪」
水槽を悠々と泳ぐ見慣れた人面ザメ。こんな街中で正体をさらして何のつもりだ。
と、いうかまず不快だ。気持ち悪い。目の暴力だ。
むしろ街中でなかったら速攻クナイを6本エラ穴に刺し、特注起爆札10枚を投げつけて爆破する。
やめろ馬鹿こっちを見るな。一般人にお前と同類と思われるなど死んでもごめんだ。

キサメが帰宅後。
俺が奴をボコボコにして埋めたのは、言うまでもない。


Title:遠いあの日
空が燃える時間。
見事な夕焼けが、景色全てを赤く染め上げる。
「うっわー、もうこんな時間だよ。
まだ終わってないっていうのにさぁ、うん……。」
「……。」
デイダラの言葉につられて自分も空を見上げると、炎の布を広げたような空が視界に飛び込んできた。
そこに薄くたなびく金色の雲。街道は赤く染まり、日が暮れる前に町へと急ぐ人が早足で行きかう。
それはかつて見た景色だった。

“ねぇ兄さん、何で夕焼けって赤いの?”
“何だ、いきなり。”
いつもの散歩の帰り道。
まだ4歳になったばかりの弟は知りたがりの年頃で、分からない事があるといつもそばにいるイタチに聞いてきた。
いきなりの質問にももう慣れてきたが、それでも何だと問わずにはいられない。
“だって、気になったんだもん。”
“そうか……でも、俺も知らないな。アカデミーではそこまで教わらなかった。”
教えられる事は忍者に必要な戦闘知識や一般教養など多岐にわたるが、
夕暮れの空が赤い理由までは教えてはもらえなかった。
“え、兄さんにも知らない事ってあるの?!”
“当たり前だろう。俺は神様じゃないんだぞ。”
まるで目の前に隕石でも降ってきたかのような顔をして、サスケは目をまん丸にして驚いた。
それに呆れたイタチが返事をすると、今度は何か悪巧みでもするかのような顔になる。
“へ〜……兄さんにも知らない事がね〜……。”
“サスケ、何お前ニヤニヤ笑ってるんだ……。気持ち悪いぞ。”
いくら4歳児とはいえ、ニヤニヤ意地悪く笑う顔は見ていて気分がいいものではない。
何を考えているのだろう。どうせ下らない事だろうが。
“へへっ、なんでもないよー。”
“変な奴……。”


「イタチー、どうしたんだ?
置いてくぞ〜、うん。」
デイダラが4,5m先から怪訝そうな顔をして声をかけた。
その声ではっとイタチは我に返る。だが、表情にその驚きが表れたのは一瞬。
「……今行く。」
そう返事して歩き始める。
今更、あの頃に戻れるわけも無い。
あの日自分と手をつないでいた弟は、同じ空の向こうで憎しみの炎を瞳に秘める復讐者となった。
自分もまた、里を捨てて黒き衣に身を包む犯罪者。
あの頃と同じものは、もう自分の体に流れる血しかないかもしれない。
しかしおかしなもので、思い出の欠片は唐突にその姿を見せるのだ。
何もかもが変わり果てた、今この時でさえも。

今更、何の未練も無いはずなのに。
幸せだった幼い日と同じ空が、ひどく目に焼きついた。

Title:毛根喪中

ある日のアジトでのこと。暇人達は一枚の写真を囲んで何かをしていた。
「惜しくない人を亡くしました……ぶふっ。」
こらえ切れずに吹き出すイタチ。全身がプルプル震えている。
一体何を見てそんなに笑っているのかと思って覗き込んだ鬼鮫は、イタチの手元を見て愕然とした。
「ちょ、何変な合成写真を作ってるんですか?!」
彼の笑いの原因は、なぜかマジックで遺影状態にされたサソリの写真。しかもハゲだった。
どうやって作ったのかは不明だが、まごうことなく頭頂部がまばゆい輝きを放っている。
「違うよサメ〜、これが旦那の真の姿なんだってば〜、うん♪」
「コレハマタ見事ナ合成ダナ。オモシロイ。死因ハ毛根ノ全滅デ決マリダナ。」
ゼツも珍しく楽しそうな上に、イタチとデイダラ並みにひどい。
暁は日ごろ娯楽が少ないのだろうか。と、そこにネタにされている本人が勢いよく駆け込んできた。
「こぉんのクソガキャァァァァ!!」
「あ、右側頭部に10円はげ。」
「な、何ぃ?!い、育毛戦士はどこだ?!!」
怒鳴り込んできた直後、イタチに指摘され激しく取り乱すサソリ。
右手で髪をチェックしつつ、左手でコートの中の育毛剤を探し回っている。
はっきりいって笑える光景だ。そこで、イタチがまたぷっと吹き出す。
「嘘だ。」
「うっわー、取り乱してる〜。やっぱ、ハゲの自覚あるからだな、うん!」
「き・さ・ま・らーーーー!!!」
勝手に納得するイタチとデイダラ。
そこではめられたことにようやく気づき、サソリは怒髪天を衝く。
どこからか傀儡を5体持ち出して、室内だというのに殺る気満々である。
「あ゛ーーー、ちょ、こんなところで暴れないでくださいよ!
イタチさん達もあおらない!!」
「あおってないぞ。ちょっと本当の事言っただけだし。」
いかにも不思議そうに答えるデイダラ。
当然、この発言自体がサソリの怒りをあおる確信犯的行動である。
「一緒じゃないですか!!」
そしてサメの悲鳴にも似たつっこみが決まる。
暁のある馬鹿な日のことであった。

教訓・仲間を勝手に殺すな。

Title:現実歪曲

おい、お前らが誤解しても仕方はないがな、これは自分でやったんだ。
断じて誰かに改造されたわけじゃない。
これはこの方が都合がいいからやっただけで、決してマッドサイコな趣味じゃない
これでわかったろ、あれは素顔だ。まごうことなくすっぴんだ。
何?言い訳するな?見苦しいだと?
でも、やっぱりあのふさふさの髪は育毛剤でぎりぎり保ってるんだろうって?
違う!いくらなんでも20そこら(当時)で禿げてたまるか!!
どうせあの美形薄幸フェイスは、大蛇丸から他人の顔を奪うあの術を教わって他人から奪ったんだろうって?
ハゲじゃないといってるだろうが!!
それに、これは素顔だと何度言えばわかるんだこのクソガキ共!!
いい加減しつこいと……って、誰がサイボーグだデイダラ!
俺の体はれっきとした人傀儡だ!!
なに?前にあげたあの予備のマスク用粘土は役に立ってるかだと?
特殊メイク用粘土なんか、とっくの昔に捨ててるわ!!
俺の顔はすっぴんだと、前も言っただろうが!
何?人の好意を無にした?悪意だろうあれは。
って、なんだその灯油と機械油は。
何、そろそろ燃料切れと関節の錆びが気になると思ったから?
だからあの体は人傀儡だといっているだろうか!!いらん気は使わんでいい!
大体そいつらは機械用だろうが。
しかもその灯油、前の冬に使った残りで古い奴だしな……。元のところにちゃんと返してこい!
それと機械油は、その辺の技師のところにでも渡して来い!
いや、はいじゃないだろ、はいじゃ。何でまた俺に渡すんだ。
え?そこに居るマッドサイエンティストなサイボーグだからあげるだと?

ふざけるなーーー!!

〜〜〜っ、イタチ、デイダラ!
お前らなんか、将来顔面梅干症候群になってろ!!
うちのチヨバアみたいなツラにな!
全身、常に脱水されたかのようなシワだらけになるがいい。
いいか、笑ってられるのも今のうちだ。
お前らだっていつまでも若くない。
いつかは、はげたりシワだらけになって、外見の衰えに苦しむ日が来るんだぞ。
若い頃とは似ても似つかなくなる。男だって体形は崩れるしな。
ビール腹になって、加齢臭で若い女にでも嫌われてろ。
その時、今の暴言を後悔したって遅い。そんなことも分からんのか。
……何、俺の父上は前も言ったがハゲの兆候はなかったし、
割と若い頃の顔そのまま老けた感じだったから平気だ?
オイラは抜け毛も少ないし、一族も割と童顔で、しかも体重には気を使ってるから平気だと?
ま、また完全に他人事扱いするとは……。
安心しろ、サイボーグの気持ちは一生分からないとか、満面の笑みでいいやがって。
あまつさえ管理も楽だから毛は全部そっちまえだの、
失われた若さの亡霊を追い求めるのはやめにして、さっさとマスク取れだのなんだの……。

…………貴様ら、ホントにこれ以上俺をいじめて何が楽しいんだーーーー!!!

……悔しかった俺はその晩、今度は強力下剤を2人の食事に混入しようとした。
だが、あっけなくばれた挙句、命の次に大切な自毛を虎刈りにされた。
サイボーグでも髪が伸びるか試そうか、なんて無邪気にほざきやがって。
髪の毛を刈られたせいで、死んだ方がましな気分で一杯だ。
前も言ったがS級犯罪だぞこれは。こんな残酷なマネを、笑ってやつらは……。
ついでにマスクをとって皮膚呼吸解放とかほざいて、顔まで引っ張りやがって!
当然取れないのに、そうしたら顔とマスクが同化してるだの何だのまだほざいて……。
うぅ、思い出しただけで怒りの震えが止まらん。血管が切れそうだ。
死んでもガキは嫌いだ……いつか絶対覚えてろ!!



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