投げっぱなしショートショート(?)の置き場。
1つのテーマで5つを目安にした連作。1つあたりは短いです。また、欠番は後日追加(アイコンに追記されます
たまに混ざってる死ネタは注意書きつき+本文が灰色なので、苦手な方は読み飛ばしてください。
カップリングはウタカタとホタル。文中で神疾は霹靂(偽名)と呼ばれることもあります。

Title:ホタルと一緒
アニメオリキャラのホタルが一緒。砦にいたり旅の途中だったり。
タイトルは全てFF5の曲名から。ご存知なら内容も想像がつくかも。ノリは割とまとも。

1.離愁(死ネタ) 2.はるかなる故郷 3.大森林の伝説 4.銀嶺を行く 5.大いなる翼を広げ






























1.離愁(死にネタ)
ほんの数分前の事。目の前だったのに、救おうと伸ばした手は遅かった。
「良かった……ご無事で。」
その言葉と微笑みを最後に、誰よりもウタカタを慕った少女は天へと旅立った。

「馬鹿がっ……!お前がかばわなくたって……俺は――。」
かすれたうめき声が吐き出される。
膝が崩れたような格好で座り込んだウタカタの腕の中に、胸を貫かれて息絶えたホタルがいた。
ポツポツと物言わぬ頬に水が落ちる。
「ふっ……俺にも、人の情があったらしいな。」
涙を流したのなんて何年ぶりだろうかと、つい記憶を探ってしまう。
そもそも里を出奔してから、彼女を除いてはこんな風になるほど人間と親しくした覚えはない。
「……なあ。」
「何だよ……。」
「君もそんな顔をするのか。」
自分の顔を見られないように注意しながら見ると、神疾が悲しそうな面持ちで片膝をついていた。
そういえば彼は、ホタルの死に目すら逃してしまったのだと思い出した。
「どんな顔だか知らねーけど、そりゃするぜ。」
「……そうか、分かった。」
妖魔も人間に情が移る事を、その反応で理解する。
元々感情豊かで、普段は別種族の心理的隔たりも感じさせない神疾だから、
共感できる感情を持っていてくれるだろうとは思っていたが。
「ごめんな……守ってやれなくて。」
亡骸ではなく天に向かってそう言ったのは、彼の目に天に昇るホタルの魂でも見えているからなのか。
彼もあの場に居たら、きっとホタルは今もここで笑っていたと思うとやるせない。
しばらく重い沈黙が流れた。
「……葬ってやらねーとな。」
沈黙を破ったのは、地面にすとんと落ちそうな沈んだ神疾の呟き。
「……荼毘に付すのか。」
ウタカタの問いに無言の首肯が返る。
たったそれだけなのだが、それが心臓をつかまれたような感覚をもたらす。
「……。」
「言いたい事は分かるけどな、この体はもう空っぽなんだよ……。
ホタルはいなくなっちまった。」
「そんな事っ!」
「お前らはそう思わねーかも知れないけどな、体って言うのは、良くも悪くも魂の入れ物でしかないんだよ。
……死んだら全部、何も残さず消えちまうんだ。どうせ。」
「何を……。」
反論しかけて言葉を飲み込む。しかし、彼の目に嘲笑するような色は無い。
むしろとても悲しそうだった。妖魔には妖魔なりの死生観があっての発言だったということなのだろう。
「……といってもお前ら人間は、ちゃんとしてれば結構残せたっけな。
髪の毛でも切っとくか。」
言うが早いか、躊躇せずホタルの豊かなくすんだ金髪を一束分糸で結び、適当な長さを作って小刀で切り落とす。
そして、それをウタカタに渡した。
「持っとけ。こいつはお前のあとをくっついてくのが、趣味だった奴なんだからな。」
「……体は意味がないんじゃないのか?」
「うるせーな。とっとけるもんなんだから、おとなしくとっとけよ。
どっちにしたって、あいつが居たって証拠だろうが。他にろくなもんも持ってねーし……。」
アクセサリーも持っていない彼女には、形見になるようなものはろくに無い。
持っているのは、持ち主同様無残に変わり果てた着衣と、必需品が雑多に入った荷物だけだ。
神疾が言うとおり、遺髪位しかないのが現実だろう。彼女がこの世にいたという証拠を黙ってしまい込む。
「じゃあ――。」
「待ってくれ!」
神疾が詠唱を始める気配を察して、反射的に彼の腕を押さえた。
「あのな。」
「嫌だ……消さないでくれ。」
困惑されることを承知で、それでもウタカタは縋った。
うつむいた顔からさらに涙が落ちる。彼がどんな顔をしているか確かめる余裕はない。
脳裏によぎるのは、元気だった頃のホタルの笑顔ばかりだ。
「俺からホタルを奪わないでくれ……!!」
「……好きで燃やすわけじゃねーんだけどな。」
ため息を1つ吐いても、嘆くウタカタの手は振り払わない。
唱える気をなくしたのか。のろのろと顔を上げると、複雑そうな神疾と目が合った。
「ごめんな。」
「……何でお前が謝るんだ。」
理由の察しはつくが、落ち度ならウタカタの方が大きいだろう。
「いっそいつもみたいに罵倒された方が、楽だったよ……。」
女一人守れない馬鹿となじられたら、かえって気分が楽だったろうに。
無神経で口が悪いくせに、今日だけは空気を察した妖魔に八つ当たりの感情を抱きつつも、
ホタルの亡骸をしばらくそっとして置いてくれそうなことには感謝した。


:先立たれたらよりダメージが深いのは、多分ウタカタ側だと思います。
 ちなみに神疾の台詞は、妖魔の死体事情の表れという事で。


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2.はるかなる故郷
天気のいい午後に、砦にある屋敷の縁側で日に当たっていた時の事。
ウタカタはいつの間にかそばに来ていたホタルと、他愛のない雑談に興じていた。
「ウタカタ様って、この辺りだと珍しい術ばかりご存じなんですね。
シャボン玉もそうですけど、水遁とか。」
「そうか?」
シャボン玉はともかく、水遁なんて基本の五大属性の1つなのだから、特に珍しくも何ともないだろうに。
少なくともウタカタの故郷は水の国というだけあって、馬の糞ほど居た気がする。
「はい。火の国で強い水遁の使い手はあまり居ません。
火遁か風遁ばかりですから。」
「ああ、そういえばそっちは弱かったか。」
言われてやっと、火の国が名前の通り水遁が盛んではないことを思い出した。
ましてホタルはこんな田舎の生まれであるわけだから、珍しいと思っても仕方がない。
「ウタカタ様の出身地では、水遁が盛んだったんですか?」
「まあ、そうだな。」
「あ、やっぱり!そうじゃないかなって思ってました。」
「……まさか、もっと水遁を教えろとか言うつもりか?」
この間水乱破を彼女が覚えてしまったのは、
ウタカタに言わせれば一種の手違いだから別として、それ以外は教えてやるつもりはない。
「そうだって言ったらどうします?」
「断る。」
「えー、やっぱりだめなんですか?」
そう言われても、弟子にする気はないのは相変わらずだ。
彼女の頑固さというかしぶとさには呆れを通り越して感心さえ覚えてしまうが、どちらに感情が振れたところで返事は変えない。
「それと、俺の出身地についてあんまりつっこんだことは聞かないでくれ。」
「嫌な事でもあったんですか?」
「どうだっていいじゃないか。
国を離れてふらふらしてる忍者なんて、多かれ少なかれ大体訳ありだ。このくらい常識だろう?」
仕事は別として、それ以外の忍者が国許を離れていたら十中八九抜け忍だ。
残りの二一が許可を取った武者修行と言ったところか。
大半がすねに傷持つ身なのだから、昔の事を聞かれたらいい顔をしない人間が多い。
「そうですか……禁句が多いですね、ウタカタ様。」
「ほっといてくれ。お前、口は災いの元だって知らないのか?」
「むー……分かりました。
せっかくだから昔のお話、聞きたかったんですけどね。」
「……ホタル、キジも鳴かずば撃たれまいという言葉もあるんだが。」
目を細くして軽く睨むと、流石にしつこいと思ったのか彼女は露骨に嫌そうな顔をした。
「話したくないのはもうわかってますってば!
もー、何でそんなに大人気ないんですか。」
「ふん。お前が未練がましいからさ。」
そう言ったらその言い草が大人気ないという抗議が飛んできたが、ウタカタはそっぽを向いて全て黙殺した。
―故郷の話なんて、俺にはタチの悪い罰ゲームみたいなもんなんだよ。―
胸中で毒づいて、ホタルに見えないところで眉をひそめる。
こんな事を言ったら今度こそうるさいだろうから、決して口には出さないが。


:霧隠れ時代はろくなことなさそうなので、当人としては触れて欲しくなさそうです。

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3.大森林の伝説
光もろくに射し込まず、人が整備した道がない暗く鬱蒼とした森。
昼間だというのに、生き物の気配にも乏しい不気味な場所だ。
「こんな所を通るんですか?何だかすごく不気味なんですけど……。」
「ここが一番人目に付かない近道らしいからな。諦めてくれ。」
動物の気配もない場所だから不安になるのは仕方が無いが、他に選択肢はない。
「そうそう。後、光の方に歩いてくんじゃねーぞ。」
「どうしてですか?」
神疾の注意に、ホタルが首をかしげた。
「この森の一番危ない所なんだよ。さっき名前を教えただろ?時翔森だって。」
「はい。」
ちゃんと話は聞いていたので、もちろんホタルは覚えている。
「光につられて歩いてくと、他の時代に放り出されちまうって話だぞ。」
「え、ええ?!ほ、本当ですか?」
額面通りに受け取れば、それは紛う事なきタイムスリップだ。
ホタルは目をまん丸にして驚いた。
「本当かは知らねーよ。ただ、たまに帰ってきた奴はそう言ってるぜ。」
「要するに神隠しの森って事か。あの親父、肝心の所を黙ってたわけだな。」
地元の人間が立ち寄らないという噂で、曰く付きとは思っていた。
もっともウタカタも、それが神隠しとは思わなかったが。
「そういうわけだから、あんまりおれから離れんなよ。」
「言われなくてもそうします!は、早く行きましょう!」
「そう言ってる奴が一番罠にはまるらしいぜ。」
「いや〜!!」
さっさと先を促したそばからかかった神疾の台詞のせいで、耳に刺さりかねない高い悲鳴が上がる。
ウタカタは思わずため息だ。
「……あんまりいじめるなよ。」
大体女性というものはこの手の事で大げさに騒ぎ出すのだから、無神経に不安を煽る真似はやめて欲しいものだ。
「嘘じゃねーって。性格悪いんだよこの森の木霊共。」
「木霊?」
「そう、ここの木全部に住んでるんだよ。弱っちいのがたくさんな。
それが集まって、びっくりする位強い霊力を使うんだと。
お前らじゃだめだろうけど、霊感のある奴ならたくさん見えるはずだぜ。」
「本当にか?」
確かに精霊の類はあちらこちらに宿っているという話はあるが、見た事がない身としては半信半疑だ。
「本当だって。『出てこいよ』、木霊共。」
神疾が力を持った言葉で呼びかける。すると辺りの木霊達が、言霊に従って姿を現した。
うすい霞のような、形の定まらない森の精霊達。彼が言ったとおり驚くほど数が多い。
「わぁ、こんなにたくさん……!」
「ああ……これは多いな。」
どこもかしこも、木の根元から枝の先まで埋めるように存在している。
「だろ。こいつらがまとまって力を使うんだ。侮れねーだろ?」
確かに彼らが力を合わせたら、人間くらいどうにでもなるだろう。
数で圧倒されている現在、納得せざるを得ない。
「すごいですね……あ、こんな近くにも。」
「ああ……そうだな。」
よく見れば、ホタルの足元にも木霊の姿が見えた。
だが神疾の事は恐れているのか、本体が入っているウタカタはもちろん、偽体の方も彼らは遠巻きにしている。
彼が司る雷の力は木々を破壊し、火事を引き起こすことさえあるからだろうか。
「……これに恐れられる君は、もっと侮れないな。」
「どういう意味だよ?」
「そのままさ。」
嫌そうな顔をした神疾にしれっとそう答えて、ウタカタは木霊が舞う森を眺めた。


:以前アップした小説の舞台・時翔森。
 はた迷惑なタイムスリップ(真偽不明)は、お住まいの木霊の仕業というお話。
 ちなみに彼らは、土の磊狢や水の磯撫なら寄ってくるかもしれません。火の狐炎は言わずもがな。

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4.銀嶺を行く

5.大いなる翼を広げ


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