※ギャグ臭漂いますが、一応エロ。

          ギブミーボディ


ふわふわと擬音がつきそうな、宙に浮いた加流羅の姿。
彼女は今、眉間にしわを寄せつつ自分の両手を見つめている。
―体があればいいのに。
今まで何度となく思ったことだが、今回そう思った理由は今までよりもずっと他愛無いかつ真剣だ。
だが、思ったところでもちろん叶うわけもない。
八つ当たりで引っぱたいても、柔らかい宿屋の布団は霊体の手に触れることなくすり抜けた。
まるで、幽霊の癖に馬鹿じゃないのとあざ笑われているようで、余計に腹が立ってくる。
「……だってさ。」
「はぁ?……何だそれは。」
息子達の会話の中身も、今の加流羅には環境音にしか聞こえない。
しかし、次に我愛羅が発した言葉だけは別だった。
「ところで、あの馬鹿は一体どこの色町まで行ったか聞いてないか?」
「え……聞いてないじゃん。」
幽霊に気を使えという無理なことは出来るだけ言いたくないが、今だけは間の悪い末っ子を恨んだ加流羅だった。
「……なぁ、何か部屋の空気が悪くないか?」
「そうか?気のせいじゃん?」
何も知らない息子達は、のんきに会話を続けるだけだった。

加流羅が体が欲しいと恨めしくなる今の理由は、とても単純だ。
我愛羅が単純に守鶴の行き先を気にして口にした、「色町」。
守鶴がよく行っている場所のひとつである。
“しょうがないけど、やっぱり……はぁ〜……。”
彼だって男なのだから、理由は加流羅だってちゃんと分かっているし、納得だってしている。
別にその手の店の女性にかまけて、加流羅をほったらかしにするわけでもないのだから。
ちゃんと大切にしてもらえるし、構ってもくれる。
それでも、体があるとないとでは、やれる事にもしてもらえる事にも差がかなり出るわけで。
変な意味ではなく、言葉だけでは物足りない時もあるというわけだ。
体があるという、ある意味では当然の特権を持つそんな女性達が、
羨ましくもありねたましくもある。
“私だって、キスくらいできるものならして欲しいんだけど……無理よね。これだもの。”
スカスカすり抜けるサイドテーブルが、余計にむなしくなる。
守鶴の精神が偽体ではなく、我愛羅の中にいるときなら、
加流羅の方が我愛羅の体をすり抜けられるから、封印されているとはいえ触ろうと思えば出来たのだが。
しかし、肉体と霊体ではそうは行かない。
やりたくても出来ないというイライラばかり募るのは、無理なからぬことである。
自力ではどうすることも出来ないだけに、余計に増す。
だが、考えていても仕方が無い。
考えを放棄したくなった加流羅は、そのまま我愛羅の砂に戻ってふて寝した。


ちなみに、守鶴が帰ってきたのは翌日だった。
とりあえず、不機嫌な状態を彼に悟られるのは嫌だったので、我愛羅の砂から出ずにいた。
昼間ずっと姿を見せなかったので、あからさまに不審に思われただろうが、あえて無視だ。
そして、そうこうするうちに夜になった。
我愛羅達が泊まっている宿屋では、部屋は三兄弟で1つとバキや守鶴の部屋で1つといった具合に分かれている。
一部屋が3人までなのでそういう事になったらしい。
ちなみに今夜は仕事でバキが留守なので、部屋は守鶴1人だ。
ここで加流羅はようやく、守鶴の前に姿を見せた。
「お、今起きたのか?珍しいじゃねーか。今日はもう起きねぇかと思ったぜ。」
“ねぇ、守鶴……。”
「どーした?」
聞き返してくる守鶴に答えず、霊体であるにもかかわらず甘えるように擦り寄った。
そして、かねてから思っていた希望を口にした。
“今だけ……体が欲しいの。”
「へ?急にどうしたんだよ。偽体の法を使えばそりゃ出来るけど、何でだ?」
“そ、それは……。”
困った。
言いたいことはあるのだが、恥ずかしくて言うにいえない。
それでも言わなければ伝わらないから、一番自分にとって抵抗がない言い方を探す。
しかし、なかなか見つからない。
視線を泳がせていると、その様子から特殊で深刻な事情ではないと判断したのか、
守鶴は面白そうに加流羅を眺めている。
「それは?」
“う゛〜っ……!”
まさか、あなたに生身で甘えたいからなんて、口が裂けてもいえない。
しかし、他に言いようがない。
頬を真っ赤に染めつつ、加流羅は答えに窮してしまった。
かといって、言わないでいると余計にいたたまれない。
“……だって、たまには……触りたいんだもの。”
つまりにつまった挙句、かろうじてこれだけがこぼれる。
しかしこれが偽らざる本音。
あまりに恥ずかしくなってきたせいで、うつむいてしまった。
「なるほどな〜……。嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか。」
“……笑いたかったら、笑ってもいいのよ。”
加流羅が半分やけになってそう答えると、守鶴はこう言った。
「笑うわけねーだろ。オレ様だって、生身のオメーを抱きしめてぇよ。」
“えっ?”
自分だけではなかったことにびっくりして、加流羅はすっとんきょんな声を上げた。
「好きな女なんだから、それくらい普通に思ってるぜ。
ま、人目があるからなかなかそうはいかねーけどな。」
“……そうよね。”
加流羅は死人なので、うかつに姿を見せることが出来ない。
その事実にやっぱり邪魔をされるのかとちょっと暗い気分になる。
「そんな顔すんなよ。世の中、いっくらでも抜け道と裏技はあるぜ?」
“?”
「まぁ、待ってろよ。」
守鶴が、妖術を詠唱する。
何の効果かは良く分からないが、一瞬部屋の空気が震えた。
「……これでこっちは終わりだ。後は体だな。
術を唱え終わったら、出来た体にすぐ入ればいいぜ。」
“わ、わかったわ。”
加流羅が返事をすると、守鶴はいよいよ偽体の法の詠唱を始めた。
「この世にうつろう肉体無き者のため、偽りの器を作らん。―偽体の法。」
詠唱と共に生じた薄いもやが、唱え終わると一気に凝集して肉体となる。
力を一瞬で集めて生成された肉体に、言われたとおりに加流羅は憑依した。
浮こうと思っても浮いたりしない体は、もう10数年なかった肉体の感覚だ。
思わず、自分で触ってその感触を確かめてしまう。
だがそれも束の間。体を作った本人が、ぎゅっと加流羅の細い体を抱きしめた。
「きゃっ!」
びっくりして声を上げるが、守鶴は頓着しない。
加流羅のぬくもりをしっかり抱えて、手放さないつもりでいるかのようだ。
「やっぱり、生身はいいぜ。」
そういって、加流羅に口付けた。
唇に触れるだけと思ったそれは、彼女の予想に反して深くなる。
驚いて体を離しそうになったが、腰と背中に回された腕のために逃げられない。
何度も与えられた深い口付けに、加流羅はすっかり骨抜きになってしまった。
「ちょっとぉ……守鶴……あの、私は……別に。」
ようやく解放される頃には、艶めいた吐息が漏れてしまうほどだ。
しかも、気がついたらベッドに押し倒されていた。
困惑しきりといったように、守鶴を上目遣いに見上げる。
「嫌か?」
「うっ……それは……でも。気づかれちゃう……。」
意地悪な囁き。
今更拒絶できないような状態にしておいて、わざわざこんなことを聞いてくる。
「大丈夫だって。そのために、部屋に術をかけたからな。」
「……そうなの?」
最初にかけていた術はこのためだったのだ。
妙なところで用意周到なのは、加流羅の性格を分かっているからに違いない。
「そ。」
「あっ……ちょっと!やぁ……!」
耳たぶを甘噛みされて、耳が敏感な加流羅は身もだえする。
いつの間にかワンピースの中に侵入した手が、彼女の蜜壷に触れた。
ほんのりと湿り気を帯びているそこは、
空いたもう片手で胸の線をなぞると、更に多くの蜜をこぼした。
すっかり荒くなった吐息は、守鶴を誘っているかのようだ。
「何するのよ……くぅぅ……。」
「せっかく生身同士でいられる貴重なチャンスだからよ。
それに、本気で嫌ってわけじゃないだろ。」
疑問形ですらない言葉が図星で、心を見透かされた気がしてちょっと悔しかった。
しかし、愛する人に抱かれている今の状況は、加流羅にとってむしろ嬉しい事だろう。
現に、彼女は心の奥底で守鶴を求めている。
「加流羅。」
彼女が着ているワンピースを脱がせてから、守鶴もまた着ていたものを脱ぎ捨てた。
人間の姿は仮の物とは言え、
自分を組み敷く彼の引き締まった男らしい体つきに、加流羅は胸が高鳴る。
まさか、彼に抱かれる日が来るとは思わなかったからなのか。
しかし、ぽうっとしていられたのも束の間だ。
「はぅっ……んぁっ、ああん!」
花芽をもてあそばれ、加流羅は快感にあえぐ。
その間に、鎖骨の脇や胸元に赤い花がいくつも散らされる。
加流羅は守鶴の物だと、言葉なくとも物語っている所有の証。
「きれいだな。」
「んぅ……守鶴……!」
上気した肌と、とろけた孔雀石の目。
珊瑚色の唇から漏れる吐息も言葉も、全てが美しく扇情的だ。
行為の熱が生んだ、一種の芸術品かもしれない。
「あっ!いやっ……!」
溢れる蜜ですっかり溶けたようになった蜜壷に、指が侵入する。
かき回されるたびに、加流羅の細い体に電気のような感覚が走った。
わずかに浮いた腰は、まるでもっとその感覚を求めているようにも見える。
指に絡む蜜の量は増え、太ももまで汚した。
「力、抜いてろよ。」
守鶴は頃合いを見計らって指を抜き、加流羅の中に己を入り込ませる。
「ひゃうっ……!ん……。」
守鶴とひとつになった感覚で、加流羅の声はいっそうなまめかしさを増す。
もはや、その目には目の前の彼しか映っていない。
「あぁっ!守か……はうぅ……ああん!」
何度も最奥を貫かれて、加流羅は呼吸すらままならないかの如く息荒くあえぐ。
その一方で、彼女の心には愛する人に抱かれている喜びが満ちていた。
体をもてあそぶような感覚に必死で耐えるために、守鶴の太い首に抱きつく。
「加流羅……!」
守鶴は加流羅の耳元で囁き、彼女を攻め立てる合間に耳朶を甘噛みした。
加流羅はそれだけで快感を覚える。
「やっ、あぁっ……んあぁぁーーーっ!!!」
加流羅の頭の中が、真っ白に塗りつぶされる。
抱きついたまま背をのけ反らせ、豊かな双丘が揺れた。
やや遅れて、守鶴が彼女の中に欲望を吐き出す。
「はぁ……はぁ……。」
守鶴に抱きついたまま、焦点が曖昧な目で加流羅は荒い息をつく。
「お疲れさん。久々の生身はどーだった?」
「……いきなりこんな事されて、それどころじゃなかったんだけど。」
正直な感想を述べると、守鶴はぷっと吹き出した。
「そーか〜?生身でなきゃ、ついさっきまでの事は出来――。」
「言わなくていいから!!」
守鶴の口を塞ぎつつ、加流羅は首をぶんぶんと激しく横に振った。
三児の母らしからぬリアクションだが、ウブなところがある加流羅はこんなものだ。
この調子では、過去に夫以外の男を知る機会がなかったのだろう。
「いいじゃねーか。」
「もー……馬鹿。」
守鶴に抱きかかえられて、おとなしくしつつも抗議はする。
だが、言葉とは対照的に口元にはほんのり微笑が浮かぶ。
なんだかんだで、彼女も悪くなかったということだろう。
別にこういう方向に転がるとは思っていなかったが、
生身でしか出来ない甘え方が出来たという意味では、一応当初の希望は果たせたからに違いない。

翌朝。
加流羅の偽体を消すことなく、守鶴はそのまま彼女と眠っていた。
時刻は7時をとっくに回り、いつもよりも若干遅い。
そろそろ起きないと、7時頃には目を覚ましている三兄弟がうるさいだろう。
それを知っている加流羅は、一足先に起きて時間を見ると、
横で寝ている守鶴に起きるよう促す。
「ねぇ、もう7時過ぎてるわよ。」
「んー、そーだな。」
加流羅に促され、そろそろ起きるかと思って守鶴が体を起こした、その時である。
「おい守鶴、いい加減に起き――?!」
何も知らずに、いきなり我愛羅が部屋のドアを開けた。
当然彼の目の前に飛び込んできたものは、明らかに定員を超えているベッド。
「よーまゆなし、おはようさん。」
すばやく横の加流羅が見えないように頭まで布団をかぶせた上で、
いけしゃあしゃあと守鶴は言った。
普通なら、もう少し慌てるなり言いつくろうなりしそうなものだが、
守鶴にその常識は当てはまらないようだ。
「〜〜〜〜〜っ!!」
「ん?プルプル震えてどーした?」
「お前が女遊びをいくらしようが勝手だが……!」
そこまででいったん言葉を切ってから、我愛羅はすうっと息を吸い込んだ。
「宿に連れ込むなぁぁぁぁぁぁぁ!!このっ大馬鹿が!!」
怒髪天を突いた我愛羅は、最初の用事も忘れてばたんとドアを閉めて去っていった。
布団の下でやり過ごしていた加流羅は知る由もないが、逃げるように去った我愛羅は耳まで真っ赤だった
12,3の少年に、事後の現場は相当刺激が強かったのだろう。
「も、もう大丈夫……よね。」
嫌な汗を流して、加流羅は様子を窺いつつ顔を出した。
もちろん、思いっきり引きつっている。
「だな。」
「なんだか、とっても……複雑というか、情けないというか……。
ああん、もう!よりによって子供に見られるなんて〜〜〜!!」
全然動じない守鶴とは対照的に、
頭の中が恥とショックでぐちゃぐちゃの加流羅は、バスバス枕を引っぱたきまくっている。
「気がきかねえんだよ、あんにゃろー。
幸い全然正体はばれてねぇけどな。」
「単にあなたが早くおきるか、鍵をかけてれば良かったんじゃないの……?」
「悪い、素で忘れてた!」
恨めしげに加流羅が追及すると、守鶴は潔すぎる謝罪を口にした。
かなりの単純ミスに、加流羅の中で何かが切れた。
「馬鹿ー!!もしばれたらどうするつもりだったの?!」
「おい、落ち着けって!もう術が切れてっから、騒ぐとマジで聞こえっぞ?!」
「これが落ち着けるもんですか!馬鹿!大馬鹿!最低ー!!」
さりげなく先程の末っ子の捨て台詞と同じセリフを混ぜつつ、
加流羅はガスガスと半分本気で守鶴を殴る。
恥ずかしさ余って八つ当たりの威力も倍増だ。
「いてっ!だーかーら、騒ぐと聞こえるっつーの!!
余計恥ずかしい目にあっても知らねーぞ?!」
「むー!」
終いには口を塞がれたが、加流羅はまだ言いたい事が山ほど残っている。
じたばた暴れる加流羅を、
もう片腕で抱きかかえるように守鶴が押さえ込んでなだめている、丁度その頃。

隣の部屋では、我愛羅が氷よりも冷たい目で兄を見ていた。
「何をしているカンクロウ。」
「い、いや……その、昨日ねずみの足音がしたから、ちょっと偵察じゃん……。」
あからさまに上ずった声。
壁に耳をつけてぴったり張り付きながら言われても、言い訳にすら聞こえない。
ついでに言うなら、もちろん昨日宿にネズミは出ていなかった。
「うそつけ。思いっきり聞き耳を立てているだけじゃないか。
恥を知れ!この砂の汚点!!」
「さすが、外見に馬鹿影の遺伝子を濃縮しただけのことはあるな。
品性までコピーか。嘆かわしいぞ愚兄め。」
「ちょっ……何でそんなときだけ兄貴扱いなんじゃん?!
ていうか、父さんは別にスケベじゃないって!!」
姉と弟から総スカンを食らったカンクロウは、
どちらかというとより言い草が酷い弟の発言に反論する。
しかし、もちろん我愛羅はこれでたじろぐたまではない。
「うるさい。隣に女を連れ込んだ馬鹿がいるというのを俺が言った1分後に、
壁に張り付き始めたくせに何を言う。」
「はぁ……なんでこんな奴に育ってしまったんだ……。
姉さん、母上と夜叉丸に顔向けできない。」
なおも冷たい我愛羅に、大げさにため息をついて嘆いて見せるテマリ。
その「女」が母だと知ったら、一体どんな顔をするだろう。
「酷いじゃん、俺だって健全な青少年じゃん!!
ちょ、ちょっと位好奇心があったっていいじゃんーーー!」
好奇心で身を滅ぼしている真っ最中のカンクロウは、
情けない開き直り以外になす術はなかった。


兄弟喧嘩が勃発している頃には、ようやくこっちの部屋も収まっていた。
その代わり、一部地域で湿度が高そうな雰囲気になっていたが。
「も〜嫌〜……我愛羅、お願いだから早く忘れて〜〜……。」
ぶつぶつ言い始めた加流羅の偽体をどのタイミングで消すべきか考えつつ、
守鶴は隣の部屋から聞こえてくる声をばっちり拾っていた。
もちろん、カンクロウが聞き耳を立てていることは承知している。
「あんにゃろ……後で覚えてろよ。
フッ、ケケケケケケ……。」
カンクロウの飯にこっそり大量のほうれん草をぶち込む等の嫌がらせを画策しつつ、
守鶴は乾いた不気味な忍び笑いを漏らした。
もちろん、発端となった我愛羅にはそれ以上の嫌がらせが決定されている。
この後、いつ守鶴が加流羅の偽体を消し、カンクロウと我愛羅にどんな嫌がらせをするのか。
それはまだこれからが長い今日の予定の話である。

―END―  ―戻る―

頭の悪いエロ文です。全体に漂うギャグの香りは、出だしからして運命付けられていました。
そしてオチが……(謎)カップルとかエロにしては出てくる人数が多いのはレアかも。
背景の色といい雰囲気といい、エロがなかったら堂々と表でのさばる類のにおいがぷんぷん(笑
お馬鹿なカンクロウとそれを言葉でボコすテマリと我愛羅は楽しかったです。
と、いうか後半の展開自体が気に入ってるかも……(え

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