日だまりを夢見て

ずっと、「家族」が欲しかった。
アカデミーとか、とにかく外では友達と一緒で楽しいけど。
でも、家に帰ったら一人ぼっち。
ちっちゃい時は三代目のじいちゃんのところにいたけど、
あたしの世話をしてくれていた人は、誰も「家族」みたいじゃなかった。
そっけなくて、冷たくて。話も聞いてくれなくて。
すごくさみしくて、悲しかったっけ。
それから10歳になった時にじいちゃんの家から出て、一人暮らしをはじめた。
もう冷たい人が居ないって思ったから、初めのうちはちょっとだけ喜んでたっけ。
でも、本当に誰もいない家は、冷たい世話役の人しか居ない館よりもずっとさみしかった。
本当に誰もいない家なんて、全然あったかいところじゃないんだね。

それに、よく考えたら、「家族」がいないって事は、家で一人ぼっちってだけじゃないんだよね。
大好きなイルカ先生も、もういない三代目のじいちゃんも、2人とも「みんなの」人だった。
だから、あたしだけに構ってなんて言えないし、出来るわけもないよね。
でもそれって結構、甘えん坊のあたしにはつらいんだよ。
本当はね、もっともっと甘えたかった。
家にいる間に、甘えられる人が欲しかったの。
ずーっと、ずっとね。

だからあたしね、狐炎のことも大好き。
あたしが大人に嫌われる原因で、昔は里をめちゃくちゃにした人でも。
結構冷たいし、あんまり構ってくれなくて言うことも厳しいけど。
それでもね、大好きなの。
だって、そこに居てくれるだけで嬉しいから。
いろいろ知ってるし、困った時には頼りになるし。
何より昔からずっと、見えないところからあたしを守ってくれてたしね。

あたしの前に出てきたあの日。
退屈だから、封印の仕組みを逆手にとって出てきたって言った時。
すぐにまた戻っちゃったりしないって答えてくれた時。
ほんとにほんとに、嬉しかったよ。
だって、今日から帰っても「一人」じゃないって決まったんだもん。
血は繋がってないし、種族だって違うけど、「家族」が出来たのと同じだから。
それで嬉しすぎて抱きついたら、狐炎はすごく嫌がったけどね。
でも、あの時だけは引っぺがしたりしなかったっけ。
もしかして、あたしの気持ち、やっぱり知ってたのかな。
聞いても教えてくれないと思うけど、狐炎はものすごく鋭いし、
生まれた時からあたしの事を見てるから、きっとそうなんだと思うことにするね。
都合よすぎるかな。でも、ちょっと位そう思ったっていいよね。

狐炎。
あたし、今とっても嬉しいよ。
友達もいっぱいいて、家に帰ったら「家族」がいるから。
だから、お願い。
イルカ先生に甘える時みたいに、いっぱい甘えてもいい?


―END― ―戻る―

ブラコン気質娘・ナルコの一人称で。前提となる設定は、大筋は狐日和と共通で。
書いておいて言うのもなんですが、凄まじくなりました(汗
単に、通常(男の子版)との心情の違いを描きたかったんですけど、色々と手遅れ臭満載に。
男の子版だと、あの年頃なので普段はフツーに反抗しますが、うちのナルコの性格だとこうなる、ということで。
あれだけ普段そっけない奴でも、居ると居ないとじゃ違う模様。
文中で狐炎(九尾)を大好きとか言ってますが、これは単になついているということで。
心のお父さん・イルカ先生も、ナルコはもちろん大好きですよ。
優先順位は、読み手の皆様の想像にお任せします。多いな、このパターン。
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