たんこぶタワーの無謀なる悲哀

「我愛羅、その頭さー。」
風影の執務室にやってきたナルトは、
部屋に入るなり我愛羅の頭に建設されたたんこぶの塔を見て呆れ返った。
原因は分かっている。
「……またで悪かったな。」
「やっぱしー。いい加減懲りろってばよ。
もー我愛羅ってば、何で毎日毎日守鶴と喧嘩するわけ?カンクロウが愚痴ってたってばよ?」
いかに本体ではなく仮の体と言っても、妖魔である守鶴相手に喧嘩を売るのは無謀の極み。
我愛羅がいくらむくれても勝手だが、いい加減懲りるべきだとナルトでさえ思う。
いつもいつも、ほとんど不良の因縁つけのレベルで突っかかっては制裁され、
彼の姉も兄も常々ため息をついているのは彼女も知るところだ。
「 あいつが気に入らない。これに尽きる。」
「そりゃからかってきたりするけどー……。」
堂々と開き直る態度に、さらに彼女は呆れた。
「違う。それもあるが……。」
ナルトが気づいていないと思って口を開きかけると、ようやく気づいたらしく横から彼女がさえぎる。
「あ、母ちゃんのこと?えー、いいじゃん。ラブラブみたいだし。」
守鶴は我愛羅の母・加流羅を、それはそれは愛している。
何しろ自分に使ったものと同じ術で彼女の分まで体を作ってやった上に、
いつも風影邸の離れまで会いに行っては睦まじく過ごしているのだ。
ナルトに言わせれば、ラブラブな恋人の邪魔するなんて空気読めない!と言ったところである。
「何だと……じゃあナルト、聞くぞ。
お前は仮に自分の母親が居て、そいつがあの人と結婚するって言い出したら嫌じゃないのか?!」
あの人とはこの場合、ナルトに封印されている九尾・狐炎を指す。
いくら彼女でも、自分が我愛羅と同じ状況なら考えるだろう。
「嫌じゃないけど?」
「ぐわぁーーっ!」
即答された我愛羅はあえなく撃沈した。
「何だってばもー、我愛羅うるさ〜い。」
「お前のブラコンに驚愕した……。」
単に我愛羅の読みが甘かっただけなのだが、
理解してもらう唯一の望みを断たれたショックのせいか気づいていない。
「だって、あたし狐炎好きだもん。
今だって似たようなもんだし、別にいいってばよ。」
その好きの意味が、どう考えてもなついている親族向けのものとはいえ、サラッと言われると恋人としては痛い。
向こうはなつかれて半分迷惑そうではあるが、デート中であっても彼を見つけると飛んでってしまうから悲しいものがある。
ちなみにこの現象はテマリいわく、犬が飼い主に尻尾を振るようなものらしいので諦めた。
「もういい……。
お前には、俺のこのやりきれない悔しさは分からないんだな……。」
「うん。」
「ナルトォォォォォォ!!!」
捨て身に等しい、と本人は思っていた渾身の一言まで粉砕され、我愛羅の無駄にやかましい絶叫が部屋中に轟いた。
もちろん直後に、うるさいと怒る甲高い怒声も響くに違いなかった。


外はいつも通り灼熱世界なのに、恋人は冷蔵庫よりも冷たい。
そんな日も、たまにはある。

―完―  ―戻る―

特に意味のない小ネタ話。 たんこぶタワーは今回3重の塔くらいです。
♀ナルトと見解が食い違ったまま終わります。
そういえば普通に仲がいい話をなかなか思いついていないような気がしますが、
こういう性格の組み合わせだからしょうがないということにしておきます。
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